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2024年 商法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 商法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/4/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

同志社大学法科大学院2024年 商法

問1

1. 取締役会設置会社では、取締役を3名以上おく必要があり(会社法(以下、略)331条5項)、かつ、監査役を置く必要がある(327条2項本文)。そうすると、甲社が取締役会を設置するには、取締役3名、監査役1名の計4名の役員を選任する必要があることになる。これは「設立する甲社においては、役員はA・B・Cの3名とする。会計参与は置かない。」というAらの意思に沿わない。したがって、甲社は、取締役会を設置することができない。
 また、公開会社では取締役会の設置が強制されるところ(327条1項1号)、上記のとおり甲社では取締役会を設置することはできないから、甲社は非公開会社である。甲社が非公開会社かつ取締役会非設置会社である場合、会社法上、監査役を置くことを義務付けられないが、任意に、定款に定めることで、監査役を置くことができる(326条2項)。そのため、甲社は、Cを監査役に選任することができる。
 さらに、甲社が非公開会社かつ取締役会非設置会社である場合、取締役を3名以上おいた場合でも、非公開会社においては、取締役会の設置は強制されず、取締役会非設置会社が選任する取締役の員数には法律上の上限はない。そのため、甲社はCを取締役に選任することができる。このとき、Cが業務を執行しないことを明確にするには、その旨を定款に定めることができる(348条)。

問2

1. ①について
⑴ 直接取引の該当性とその承認機関
 本件取得は、甲社がその取締役Aとの間でAの所有する不動産を譲り受けるものであるため、「取締役」Aが「自己…のために株式会社と取引をしようとするとき」、すなわち直接取引(356条1項2号)にあたる。そのため、取締役会非設置会社である甲社では、本件取引につき取締役が決定し、重要な事実を開示した上で株主総会普通決議による事前の承認を得ることが必要である(356条1項柱書、309条1項)。

⑵ 事後設立の該当性とその承認機関
 本件取得は、甲社の設立後2年以内に、甲社の事業用不動産を取得するものであるため、事後設立(467条1項5号本文)に該当する。また、取得対価700万円は、甲社において、設立時の純資産額2000万円から大きく変化なしとの前提から、甲社の純資産額の5分の1を超えると考えられる(法467条1項5号ただし書)。
 そうすると、本件取引は、その効力発生日までに、株主総会の特別決議による承認が必要である(467条1項柱書、309条2項11号)。

2. ②について
⑴ A、BおよびCの3名が集まった場において、本件取得を決定または承認するか否かが判断されている。この株主総会決議(以下「本件決議」という。)は、有効か。

ア 招集手続の違法(831条1項1号)
 取締役会非設置会社では、取締役の過半数の賛成により総会の招集・議題などを決定し(348条3項3号)、業務執行取締役による招集手続が行われる必要がある(298条1項)ところ、本件決議においては、総会招集の手続(298条1項、299条1項)を経た事実はない。

イ 全員出席総会
 もっとも、招集通知は株主の総会への出席および準備の確保がその趣旨であるから全株主が議題に同意して出席し、総会の権限事項につき決議をした場合には、議題の事前通知を欠いていても、全員出席総会として例外的に適法な株主総会となる。また、300条によって招集手続(招集通知を含む)は不要となる。確かに、本件決議に係る総会には、ABCの全株主が出席している。もっとも、Cは本件決議で反対しているところ、これが総会開催に反対の意味を含むとすれば、本件決議はいずれも招集手続の法令違反であり、決議取消事由となる(831条1項1号)。

ウ 裁量棄却
 しかし、Cが出席している以上、招集手続規定が保障する議決権行使の機会は与えられたものといえ、当該「違反する事実」は「重大」でないと認められる。議決権800万円を出資したAおよび600万円を出資したBが出席し、賛成している以上、普通決議・特別決議のいずれの定足数および決議要件を満たすため(2000万分の1400万の賛成)、当該「違反する事実」は「決議の結果に影響を及ぼさないこと」が認められる。そうすると、上記招集手続の違法については、裁量棄却(831条2項)の判断がなされるべきである。

エ 以上より、本件取引は、本件決議により有効に決定・承認されたものと認められるため、適法にこれを行うことができる。もっとも、なお、本件決議は、本件取引の相手方であり本件決議について「特別の利害関係を有する者」であるAの賛成により可決されたものであるため、直接取引・事後設立、いずれの決議についても決議内容(対価)が著しく不当といえる場合には、831条1項3号の決議取消事由が認められる余地があり、この場合には本件取得は適法にできない。

以上

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