4/6/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2025年 商法
問1
1. 本件申請は、「親会社」であるA株式会社の「社員」たるX1とX2が、その完全子会社であるY社の会計帳簿の閲覧謄写を申請するものであるため、本件申請の法的根拠は、Y社の「会計帳簿が…が書面をもって作成されているときは、」433条3項、同条1項1号で、「会計帳簿が…電磁的記録をもって作成されているときは、」同条3項、同条1項2号である。
2. 他方、主張1は、同条4項、同条2項の会計帳簿の閲覧謄写請求の不許可事由のうち、X2がY社と同様に青果卸売業を行うC社の30%と多くの割合の株式を有し、取締役であるとしてY社「の業務と実質的に競争関係にある事業…に従事する者である」ことが内容だと考えられるから、同条4項、同条2項3号が法的根拠である。
問2
1. 主張2は適切か。この点、X1は後述の通り不許可事由の認められるX2と親子関係にあるところ、親子であれば秘匿性の高い情報でさえ共有している可能性は高く、また一般的に利害状況は一致していると言える。そして、X1が取得したY社の会計の情報は、X2にとってC社の営業に利用しうる有益な情報である。そのため、X1がX2に情報を漏らす可能性は極めて高いと言える。したがって、X1はX2と一体と考えて、X1にもX2と同様の不許可事由が認められると考える。以上より、主張2は適切である。
問3
1. 主張3は、会計帳簿の内容を自己の競業に利用する主観的意図がないために不許可事由に当たらないとするものであるが、433条2項3号の不許可事由に当たるためにはかかる主観的意図は必要か。
2. 同号の趣旨は競争関係のある者が閲覧内容を濫用し、会社の業務執行を阻害することを防止する点にある。そのため、たとえ請求時に正当な権利行使目的を有していたとしても、将来の濫用可能性は否定できないし、株主名簿と異なり取引事項の記載があるため会社に及ぼす経済的打撃の危険が大きい。また、主観的意図の立証は困難である。従って、同号の拒絶事由に該当するには、自己の競業に利用するという主観的意図を要しないと解する。
3. 以上より、主張3は不適切である。
以上