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2022年 民事訴訟法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民事訴訟法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】

10/26/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

北海道大学法科大学院2022年 民事訴訟法

 

問1

 自由心証主義(民事訴訟法(以下、略)247条)とは、裁判における事実の認定において、①証拠方法の採否と②取り調べた証拠の証明力の評価を、原則として裁判官の自由な心証に委ねる建前をいう。これは、真実発見のためには証拠方法や経験則を限定しないのが望ましいという観点と、裁判官の専門的知識・経験は十分に信頼できるという観点から基礎づけられる。
 これに対し、あらかじめ一定の証拠法則を定めたうえで、これに従って事実認定を行う建前のことを証拠法定主義という。この証拠法定主義によると、①証拠方法の採否については、ある特定の契約の存在を証明するための証拠方法は文書に限ると義務付けたり、➁証明力の評価について、一定数以上の証人の証言が一致した場合にはそれを真実と認めなければならないなどと規定して裁判所の判断を拘束することになる。
 これに対して、自由心証主義によれば、①特定の契約の存在を証明するための証拠方法は文書に限られずあらゆる方法によることができるし、➁証明力の評価についても裁判所が自らの心証に従って判断を下すことができる。そして、社会が複雑化かつ多様化した現代社会においては、証拠法定主義のような硬質的な方法ではなく、あらゆる証拠方法によって証明を可能とし、証明力の評価についても個々の裁判官の心証に委ねるものとする自由心証主義をとることが紛争の柔軟かつ適切な解決につながる。そのため、民事訴訟においては自由心証主義が採用されている。

問2

1. 判決の内容
 裁判所の心証は、本件金銭債務の残額は10万円であること、すなわち90万円の債務の不存在であるところ、「本件金銭債務のうち10万円を超えては存在しないことを確認する」との内容の判決をすべきか。

 ⑴  そもそも裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決ができない(246条)。そこで、本件訴訟における原告の申し立て事項すなわち訴訟物が何かが問題となるが、債務不存在確認訴訟は給付訴訟の裏返しであるから、債務の不存在が訴訟物となると解する。
   本件では、XがYに対し、本件金銭債務が20万円を超えて存在しないことの確認を求める旨の、すなわち本件金銭債務80万円の不存在確認の訴えを提起している。よって、本件訴訟の訴訟物は、80万円の本件金銭債務の不存在である。
   そして、本件における裁判所の心証は、本件金銭債務の残額が10万円であることであるが、かかる心証に従って上記判決をなしては、90万円の債務の不存在を認めることになり、原告の申し立てより有利な判決をすることになるため、被告の防御の範囲を超え被告の不意打ち防止という246条の趣旨に反することになる。

 ⑵  以上より、裁判所は、「本件金銭債務のうち10万円を超えては存在しないことを確認する」との内容の判決をすべきではない。そのため、原告の申立ての範囲内で「本件金銭債務のうち20万円を超えては存在しないことを確認する」との内容の判決をすべきである。

2. 既判力の内容

 ⑴

  ア 既判力は、原則として、「主文に包含するもの」(114条1項)すなわち訴訟物たる権利法律関係の存否の判断についてのみ生じる。なぜなら、当事者の紛争解決としては訴訟物についてのみ既判力を認めれば足りるし、裁判所は攻撃防御方法について当事者の申立順序や実体法上の論理的な順序に拘束されずに容易なものから審理しうることになり審理の迅速化・弾力化に資するからである。また、理由中判断については、中間確認の訴え(145条)によれば足りる。

  イ もっとも、理由中判断であっても、相殺に関する判断については既判力が生じる(114条2項)。
    114条2項の趣旨は、反対債権についての紛争の蒸し返しを防ぐという点にあるところ、反対債権の不存在と判断された部分について既判力を生じさせればかかる趣旨は満たされる。よって、114条2項によって既判力が生じるのは、反対債権の不存在に限られると解する。
    また、かかる既判力が生じるのは、「相殺をもって対抗した額」に限られる。

 ⑵

  ア まず、本件訴訟の訴訟物は、前述の通り、本件金銭債務のうち80万円の債務の不存在である。
    よって、114条1項により、本件金銭債務のうち80万円の債務の不存在について既判力が生じる。

  イ また、Xは、100万円の本件反対債権があるとして、かかる債権を自働債権として本件金銭債権と相殺した旨主張し、裁判所は申立の範囲内において、80万円の本件反対債権が相殺によって消滅した旨の判断をしている。
    よって、114条2項により、本件反対債権のうち80万円の債務の不存在について、既判力が生じる。

以上

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