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2025年 刑事訴訟法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 刑事訴訟法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/10/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

同志社大学法科大学院2025年 刑事訴訟法


第1問

1. Kがドアを内側に押し開け、右足を一歩室内に踏み入れ、同ドアが閉められるのを防止した行為(以下、「本件行為」という。)は適法か。まず職務質問の適法性から検討する。

2. 警察官は、異常な挙動から何らかの犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問することができる(警察官職務執行法(以下、「法」という。)2条1項)。そして、法2条1項は、「質問」することを認めると共に、そのために不可欠な行為として、「停止させ」ることを明示的に認めている。「質問」をすることが許容されている以上、「停止させ」ることは例示であって、その他の「質問」に不可欠な行為も同条によって認められると解する。
 かかる行為が適法であるといえるためには、まず、「質問」が適法であることを要する。
 本問において、甲は、チェックアウトの時刻になっても一向にその手続きをしなかったこと、身体に入れ墨をしていたこと、ホテル側の料金清算要求に対し、「この部屋は二つに分かれているんじゃないか」など不可解な言動をしたことなどから、無銭宿泊の疑いや薬物使用の懸念が生じている。
 よって、「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」があるといえ、「質問」は適法である。
 そして、Kが甲が宿泊している301号室のドアをたたいて、声をかけたところ、甲はドアを少し開けた後すぐにドアを閉めていること、甲はKが制服姿であることを確認し、目が合うと慌ててドアを閉めていることからすると、甲がまたドアを開ける可能性は低いため、引き続き「質問」をするために本件行為は不可欠な行為といえる。

3. もっとも、「身柄を拘束」するに至れば同条3項に反する。同条は、禁止される行為の例示を通じて、捜査目的で行えば「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)にあたる行為を、行政警察活動として行うことを禁止するものであるから、「身柄を拘束」にあたるかは、それを捜査目的で行えば「強制の処分」にあたるかで判断する。
 本問でKは、部屋に対して一時的な管理権を持っている甲の意思に反し本件行為を行っている。しかし、本件行為は、甲の身体に対する直接の制約があるわけではないし、部屋の中30センチメートルしか侵入していないから、制約されるプライバシーも弱い。そうすると、「強制の処分」とはいえず、「身柄を拘束」したとはいえない。よって、同条3項には反しない。

4. もっとも、甲に対する私生活上の利益を制約するから、「必要な最小の限度」(法1条2項)でなければならない。そこで、不審事由の解明・犯罪の予防鎮圧などの目的を達するための「必要」と行為によって制約される利益が権衡を失すれば違法であると考える。
 本問では、甲が全裸で、入れ墨をしている。また、ドアを慌てて閉めたり、ホテル側から聞いていた事情も考慮すると、甲の嫌疑は高く、不審自由の解明・犯罪の予防鎮圧をするために本件行為の必要性は認められる。一方で、甲はチェックアウト時間を過ぎたうえに、上記のような態度を取っているから、もはや通常の客としては見られていないため、その宿泊部屋に対するプライバシーの要保護性は低下していた。
 よって、必要性と制約される利益が権衡を失っているとはいえない。

5. 以上より、本件行為は適法である。

第2問

1. 同種の前科事実があることを被告人の犯罪事実の立証に用いることには、以下のような問題点がある。

2. そもそも、被告人に前科があることから、前科を犯すような性向があり、そうすると今回も犯罪をやったに違いないという推論過程を経ることがある。この場合、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれが大きい。また、これを回避し、同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため、当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行えば、その取調べに付随して争点が拡大するおそれがあるのである。

以上

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