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2025年 憲法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 憲法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2025年 憲法

主張①

1.  A 市議会傍聴条例改正案(以下「本件改正案」という。)14条の規定は、憲法94条に反し違憲とならないか。

2. 地方公共団体は、自主条例の制定権を有するが、かかる権利には「法律の範囲内」という限界がある(憲法94条)。
 すると、本件改正案14条の規定が上位法規たる地方自治法の「範囲内」にあるかが問題となる。

3. A市議会条例改正案14条の規定は、地方自治法130条3項の委任を受けて制定される委任条例であるように思える。
 地方自治法130条の趣旨・目的は、議会の秩序を維持し、円滑な議事の整理及び議会運営にあると考えられる。そして、地方自治法 130条3項がこれを条例に委任する趣旨は行政需要に迅速に対応すること、専門的・技術的事項を詳細に定めること、地域的な特殊事情に配慮すること、という点にあると考えられる。
 一方で本件改正案14条の規定は、議会撮影及びこれをSNS等に投稿することで生じる弊害を防止する趣旨であって、その趣旨を異にする。また、規制様態も地方自治法は騒ぎ立てる傍聴人の制止、警察への引渡し、退場を命じるのに対し、本件改正案 14 条は会議傍聴における撮影を原則禁止するものであって、地方自治法と大きく異なる。
 したがって、本件改正案14条は委任の趣旨を超えた自主条例である。

4. 地方公共団体が定めた自主条例が「法律の範囲内」といえるかは、両者の対象事項と規定文言を対比するだけでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかによって決せられる(徳島市公安条例事件大 法廷判決)。そして、特定事項について、これを規律する国の法令と条例が併存する場合でも、(ⅰ)後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって、前者の規定の意図する目的を何ら阻害することが無いときや、(ⅱ)両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨であるときは、このような条例も「法律の範囲内」にあると解する。 

5. これを本問についてみると、地方自治法130条は、傍聴席が騒がしい場合に、傍聴人を制止、警察官への引渡し、退場させることで、議会の秩序を維持し、円滑な議事の整理及び議会運営をすることにあると考えられる。一方で、A市議会条例は、傍聴席における撮影行為を禁止することで、議員らに対する誹謗中傷とこれによる議員らの発言の萎縮、及び、他の傍聴人が映り込んだ画像・映像の SNS等への投稿とこれによる傍聴の差控えを防止することを目的とするものであって、地方自治法130条と目的を同じにするとは言い難い。
 しかし、本件改正案14条を適用することで、議会の秩序が失われ、円滑な議会運営が妨げられるということはできない。すると、本件改正案14条を 適用したとしても、地方自治法130条の目的が阻害されるとは言えない。

6. したがって、本件改正案14条の規定は、「法律の範囲内」にある。

主張②

1. Bの主張②は、本件改正案14条本文が傍聴人の情報摂取の自由を侵害し、憲法21条1項に反し違憲となるという主張である。

2. まず、よど号ハイジャック記事抹消事件大法廷判決は、知る自由について、個人 の人格・思想の形成・発展にとって必要不可欠であるとの理由から、憲法21条1項等 により保障されるとしている。その上で、レペタ事件判決は、様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取する自由も憲法21条1項の精神に照らして尊重される行為であるとしている。
 そうすると、傍聴人がA市議会の傍聴席において写真、映像等を撮影し、録音する行為についても、会議において議員等が発した情報を摂取する行為の一部をなすものであるから、傍聴方法の自由として憲法21条1項の精神に照らして尊重されると解する。

3. 次に、本件改正案14条本文は、傍聴人がA市議会の傍聴席において写真、映像等 を撮影し、録音する行為を原則禁止とすることで、傍聴人の情報摂取の自由の一部を制約している。

4. 違憲審査基準の厳格度は、制約される権利の性質と制約の態様を考慮して決定する。
 まず、レペタ事件は、憲法21条1項の精神に照らして尊重される行為であるとされた筆記行為の自由について、憲法21条1項の規定によって直接保障されているわけではないから、その制限・禁止について、表現の自由の制約で一般的に用いられる厳格な審査基準は要求されないとしている。
 そして、本件における傍聴人の傍聴方法の自由についても、会議において議員等が発した情報を摂取するものであり、憲法21条1項によって直接保障されるものではないから、その重要度は一般的な表現の自由に劣る。また、本件改正案は撮影、録音等という情報摂取の自由の一部を制約するもので あり、情報摂取そのものを禁止するものではないから、制約の態様も強度なものではない。加えて、本件改正案は、表現の内容に着目した規制ではないから、そういった点でも制約は強度なものではない。
 そこで、本件改正案の合憲性は、①立法目的が重要であり、かつ、②手段が目的と の関係で実質的な関連性を有するか否かで判断する。

5. まず、本件改正案の目的は、議員らに対する誹謗中傷とこれによる議員らの発言の萎縮、及び、他の傍聴人が映り込んだ画像・映像のSNS等への投稿とこれによる傍聴の差控えを防止することにある。近年のA市議会では、本会議を撮影等した傍聴人 が、動画投稿サイトやSNSで、議員が目を閉じた瞬間や議員同士で話し合っている動画を恣意的に切り取って、中傷する写真や動画を他の傍聴人の容貌等を写しながら投稿する事例が増えている。これにより、A市議会において市政に関する市民の判断材料の提供過程に歪みが生じたり、議員や参考人・関係人の発言に圧力・萎縮的効果が 生じたり、他の傍聴人がプライバシー侵害等を理由として傍聴を差し控えさせたりしている。そのような立法事実に鑑みれば、本件改正案の立法目的は、傍聴人の上記自由を制約する目的としてふさわしいといえ、重要である(①)。
 次に、上記立法事実からすると、傍聴人による撮影や録音等を許容することにより、会議の秩序を維持し、自由で十分かつ公正な審議・議決等を確保することが困難となり、立法目的が妨げられる。
 もっとも、本件改正案のような規制を課すことにより、傍聴人は撮影や録音等をすることができなくなるから、そのような規制により、立法目的の阻害を妨げることができ、手段適合性が認められる。
 確かに、本件改正案14条但書の運用により、報道機関の撮影等は認められることに なっている。しかし、本件改正案による規制は例外を設けることによって規制範囲を狭めているから、規制範囲の広さゆえ手段必要性を欠くとはいえない。また、本件改正案は、情報摂取の自由のうち、撮影や録音をする自由を妨げているのみであり、五感を用いて情報を摂取することは妨げられていないから、手段の強さから手段必要性が否定することにはならない。そうすると、手段必要性は認められ、目的と手段の実質的関連性が認められる(②)。

6. 以上より、本件改正案14条本文は傍聴人の情報摂取の自由を侵害し、憲法21条1項に反することにはならないから、B の主張②は認められない。

以上

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