2/29/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2023年 商法
問1(5行)
財産引受(会社法 (以下略)28条2号)とは、発起人が会社のため、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約である。財産引受は、目的物を過大に評価することによって契約者に対し不当に多くの株式が与えられることとなり、他に金銭出資によって株式を入手したものとの間で不平等が生じるうえ、また現物出資の潜脱により会社債権者に対し損害を生じるおそれがある。そのため、定款に記載により評価の公正性を担保する必要がある。
問2(5行)
定款規定の厳格な適用を要求してしまうと、代理人が株主でない限り一切の議決権行使が不可能となり、過度に株主の議決権行使を制約することになる。そして、定款規定を認めた趣旨が、株主以外の者による総会の攪乱を防止することにある以上、総会の攪乱の恐れが無い場合にまで議決権を制約すれば過剰な制約となるため、総会の撹乱の恐れが無い場合には定款の適用を排除すべきという考慮が働く。
問3(5行)
本件取引は契約対象の土地の鑑定評価の有無にかかわらず、会社と取締役の直接取引たる利益相反取引に該当(356条1項2号)する。そのため、株主総会において当該取引について重要な事実を開示し、承認を受けなければならない。もっとも、本件A社は取締役会設置会社であるため、365条1項の適用を受け、356条にて要する承認は取締役会で得れば足りることとなる。また、同条2項により、取引について事後報告をも要する。
問4(5行)
株主代表訴訟(847条)における責任の意義が問題となるところ、代表訴訟の制度趣旨は経営陣の馴れ合いにより取締役への提訴を懈怠するおそれがあるため、株主にこれを是正させることにより適切な会社運営を図る点にある。そして、提訴懈怠のおそれがあるのは取締役の地位に基づく責任追及の場面に限られないことから、ここにいう債務には取締役に対して有する取引債務を包含すると解する。
問5(5行)
略式以外の組織再編については株主総会において組織再編の是非を争うことができるのに対して略式組織再編では、株主総会決議が省略されるため、組織再編の是非について、株主総会で争うことができないため、事前の救済手段を強化し株主保護を図っている。
以上