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2024年 刑法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 刑法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】

4/16/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

九州大学法科大学院2024年 刑法

問1

1. 下線部①の任意同行はどの根拠規定に基づくものか。
 任意同行の根拠規定は、任意同行が行政警察目的の場合には警察官職務執行法2条2項であり、司法警察目的の場合には刑訴法198条1項本文である。
 本件で、被告人は原付のメットインの中から果物ナイフが発見され、銃砲刀剣類所持等取締法違反の嫌疑がすでにかけられていた。よって本件任意同行は司法警察目的である。

2. よって、本件任意同行の根拠規定は198条1項本文である。

問2

1. まず、無価値物である尿を犯罪の証拠物として押収する行為は、捜索・差押えの性質をもつといえる。したがって、捜索差押許可状(218条1項前段)によるべきである。ただし、強制採尿は人権の侵害にわたるおそれがあるため、218条6項を準用し、医師をして医学的に相当と認められる方法によらなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解する。

2. よって、強制採尿令状は、上記条件付き捜索差押許可状である。

問3
 下線部③のいう任意捜査の許容限度の判断枠組みは以下である。
 警察官らが身柄引受人が来なければ警察署から帰ることができない旨の虚偽の説明を行い、被告人を3時間余T警察署に留め置いたことは任意捜査として適法か。
 まず、任意捜査といえども、捜査比例の原則(197条1項本文)からの制約に服する。具体的には、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度でのみ適法と解する。
 本件で、被告人は本件所持品検査以来、警察官らに対し強い抵抗を示しておらず、警察官らにおいて被告人に対してT警察署に留まるように説得することについて何らの支障はなかったのであるから、上記の虚偽の説明を行う必要性、緊急性は認められない。それにもかかわらず、被告人の退去の事由を直接侵害するような虚偽の説明もし、被告人を留め置いた時間も短くないのであるから、本件留め置きは具体的状況のもとで相当とは言えない。
 よって、任意捜査の限界を超え違法である。

問4(1)

 まず、被告人には、覚せい剤使用の高度の嫌疑が認められている。体内の覚せい剤は、時間の経過とともに代謝してしまうため、証拠が散逸してしまう。そうした状況において、被告人は、捜査に不可欠な尿の提出を拒否し、帰宅を要求している。加えて、本件事案の各事情とは異なり、尿の任意提出を拒否した時点で帰宅させるよう求めていたときは、被告人の警察官らに対する抵抗感が強いと考えられる。そのため、T警察署に留まるよう説得することに支障があったといえる。以上の各事情に照らせば、同様の虚偽を述べて留め置くことの必要性、緊急性を肯定してよいと考える。

問4(2)

1. 本件鑑定書の証拠能力を肯定してよいか。明文はないが、適正手続(憲法31条)、将来の違法捜査の抑制、司法の廉潔性という3つの要請から、違法に収集された証拠の証拠能力は否定されうると解する。ただし、軽微な違法があった場合にまで証拠能力を否定すると、真実発見の要請(1条)に反する。そこで、①証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に証拠能力が否定されると解する。

2. 本件で、確かに、帰宅させないための方便であったことを正直に認めていたならば、当該虚偽を述べた警察官が将来において同様の行為を繰り返す可能性は低いとも思える。また、証拠である尿は、覚せい剤使用を決定づけ得る、非常に重要な価値を有している。
 しかし、虚偽説明による留め置きにより、被告人の退去の自由という重要な権利が、直接侵害されており、本件留め置きは任意捜査の限界を大きく逸脱している。また、本件鑑定書は、虚偽説明により被告人を留め置き、その間に強制採尿令状の発付を得て、尿の提出をさせたことで得られた証拠であるから、違法行為との関連性は高い。そのため、証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があったといえる(①充足)。しかも、たとえ当該警察官が虚偽説明を繰り返さないとしても、虚偽の意図が少なくとも地域第二課と刑事第二課との間で組織的に共有されていた以上、組織内の法軽視の体制は改善せず、組織内の別の警察官が同様の違法行為を繰り返す可能性は高い。そのため、証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる(②充足)。

3. 以上の各事情に照らせば、本件鑑定書の証拠能力を否定すべきと解する。

以上






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