6/29/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
一橋大学法科大学院2024年 刑事訴訟法
第三問
小問1
刑事訴訟法にいう自白とは、被告人による自己の犯罪事実の全部または主要部分を直接認める内容の供述であり、供述がなされた時期や形式は問わない。
被告人が起訴前の被疑者段階あるいは被疑者として扱われる以前の段階で行ったものであるか、それが口頭によるものか書面によるものであるか、また捜査機関に対してなしたもの、私人に対するもの、相手方のないものであったとしても、上記要件にさえ該当すれば自白に該当する。なお、構成要件該当事実を認めながらも違法性阻却自由や責任阻却自由の主張を含んでいるものも自白にあたると解される。
小問2
刑事訴訟法(以下略)319条2項は「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と定め、憲法38条3項は「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と定めており、これらが自白法則を定める法規範とされている。そしてその趣旨は、自白は一般的にその信用性が担保しづらく、疑わしい性質の証拠であることから、自白偏重により発生しうる誤判の防止とされている。
憲法と刑事訴訟法がそれぞれ定める補強法則の相違として、刑事訴訟法319条2項が明確に「公判廷における自白であると否とを問わず」補強法則を適用できるとしている点を挙げることができる一方で、憲法38条3項はこの点が明確にはされていない。
この点、判例は、公判廷での供述は自由な状態でなされ不当な影響を受けることはなく、また公判廷での虚偽自白は直ちに弁護人による訂正も可能であるから、憲法38条3項は公判廷の自白を含まないとする理解を採用している。
小問3
判例は一般的に、自白法則を実質説、すなわち自白内容となっている事実の真実性を実質的に担保する証拠が存すれば補強が認められるとする見解に立っていると考えられている。
本件判例も、かかる考え方から運転免許を受けていなかったという事実につき実質的担保を求めたものと解することが可能である。一方で、「運転行為のみならず、運転免許を受けていなかつたという事実についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要する」と、行為を一般的な形で判示していることを踏まえれば、犯罪を構成する諸要素のうち客観的要素の重要部分についてのみ補強証拠が必要とする罪体説にも親和的といえ、一定の説に基づいて本件判示を行ったかについて断定することはできないと考える。
以上