7/30/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
明治大学法科大学院2022年 行政法
問題1
設問1
行政手続法(以下、「行手法」とする。)制定前における行政処分の違法自由となる手続きの瑕疵が問題となった判例は、個人タクシー事件と群馬中央バス事件の2つである。
両判決は、個別法に規定されていた手続を履践しているか、そして仮に手続上の瑕疵があった場合には、当該瑕疵が無ければ行政庁が異なる処分を下した可能性があるか否かという基準から処分の取消事由に当たるかどうかを判断している。
設問2
一方で、行手法制定後においては、行手法による手続保障の趣旨を重視し、行手法上の明文規定である告知・聴聞、理由の提示、文書の閲覧、審査基準の公開・設定等の重要な手続きを欠いたような場合に、当該手続上の瑕疵が処分の取消事由になる。
問題2
1. 訴えの利益とは、当該取消請求の当否につき判決をする必要性が存することをいう。
2. 本件では、Xによる公文書の公開請求がなされ、これが非公開決定を受けている(以下、「本件決定」とする。)。一方で、取消訴訟継続中に、当該公文書が書証として提出されているところ、一見すると、かかる書証の提出によってXは公文書の閲覧をすることができたのであるから、公開請求の目的は果たされているといえ、訴えの利益は消滅するようにも思える。
しかし、本件条例では、公文書の「公開」は、「公文書を閲覧に供し、又は公文書の写しを交付すること」としている(本件条例2条3項)。そして、県民が文書の公開を請求(本件条例5条)し、実施機関が公開の可否を決定しなければならないとされている(本件条例8条1項)ことから、県民に公文書の閲覧を請求する権利のみならず、写しの交付を受け取る権利を含めた公文書の「公開」を請求する権利が認められていることになる。そうであるならば、訴訟において書証として当該公文書が提出されたとしても、当該文書の写しの交付を受け取ることはできていないから、法律上の利益が失われたとはいえない。
3. したがって、訴えの利益は消滅しない。
以上