6/17/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
岡山大学法科大学院2024年 民事訴訟法
問題2 問1
1. 訴訟物
売買契約に基づく300万円の代金支払請求権
2. 論拠
⑴本件で原告は一部請求をしているが一部請求における訴訟物の範囲が問題となる。
⑵この点について、原告には実体法上私的自治の原則から、債権の分割行使が可能であり、訴訟法上も当事者には訴訟の開始、審判対象の特定やその範囲の限定、訴訟の終了の権能を認める建前たる処分権主義(民訴246条参照)が認められているため、一部請求後の残部請求も認めるべきである。
もっとも、一部であることを明示せずに訴えを提起した原告が、残部について自由に請求できるとすると、被告にとって不意打ちとなる。そこで、原告が一部請求であることを明示している場合に限り、当該一部が独立した訴訟物となる。
⑶したがって、本件ではXは300万円が一部である旨を明示しているので、同債権のうち300万円部分が訴訟物になる。
問題2 問2
1. 本件で、Xは別訴においてXY債権のうち本訴で明示しなかった200万円の支払いを求める訴えを提起しているが、かかる別訴は二重起訴の禁止(民事訴訟法(以下略)142条)に抵触し不適法とならないか。二重起訴の禁止の「事件」の同一性の判断基準が問題となる。
⑴そもそも、同条の趣旨は、被告の応訴の煩、訴訟不経済、審理の矛盾抵触のおそれという弊害の防止にある。そこで、「事件」の同一性の有無は、①当事者の同一性及び②訴訟物の同一性により判断されると解する。
⑵これを本件についてみると、まず、本件で本訴と別訴の当事者はともにXとYであり、同一といえる(①充足)。
もっとも、本件では、前述のように、本訴でXは債権の一部請求である旨を明示しているため、本訴の訴訟物はXY債権の一部である300万円の代金支払請求権である一方、別訴の訴訟物はその残部である200万円の代金支払請求権であり、訴訟物が同一であるとはいえない。しかし、本訴及び別訴で審理となる債権は同一であり、異なる判断がなされることによって、実質的には審理が矛盾抵触するおそれがあるといえる。また、被告の応訴の煩、訴訟不経済についても生じるおそれが存する。
⑶したがって、本件において別訴を提起することは、142条の趣旨に反して許されないというべきである。
2. よって、本件で、別訴は不適法却下されるべきである。
以上