4/20/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
筑波大学法科大学院2024年 刑事訴訟法
1. 本件閲覧捜査は、Aの承諾なしにBのみから承諾を得て本件検索履歴を網羅的に閲覧し、写真撮影している捜査であるが、かかる捜査は、「強制の処分」(刑事訴訟法(以下略)197条1項但書)に該当しないか。
⑴「強制の処分」とは、強制処分法定主義と令状主義の両面にわたり厳格な法的制約に服する必要があるものに限定されるべきである。したがって、「強制の処分」とは、①個人の意思を制圧し、②身体、住居、財産等の重要な権利・利益に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものをいうと解すべきである。
⑵①について、本件閲覧捜査は、Bから本件タブレットを借り受けている複数日の間、本件検索履歴を網羅的に閲覧し、かつ、2023年8月30日から2024年5月26日現在までの間の本件検索履歴の全てを写真撮影するものである。かかる捜査はAの承諾を得ずに行っているものであり、かつ、Aは自己の検索履歴を閲覧されていることを知らない。すなわち、Aに無断で行っているものであり、Aに反対意思の形成機会を与えず、Aの権利を完全に侵害するものであるから、意思を制圧するものと同視できる(①充足)。
②について、検索履歴は通常誰かに閲覧されることを想定しているものではなく、個人のプライバシーに係る側面が大きい。とりわけ、本件閲覧捜査は被疑事実に関連のない検索履歴まで対象に加えている。そのため、本件検索履歴をみだりに閲覧されない権利は重要な権利と言え、本件閲覧捜査はかかる権利に制約を加えている(②充足)。
⑶したがって、本件閲覧捜査は「強制の処分」に当たる。
2. 本件閲覧捜査は、本件タブレットからインターネットに接続し、本件アカウントに係るG社のサーバーにアクセスした上で行う捜査であり、リモートアクセスを含む捜査である。この操作を行うには、本件タブレットを「差し押さえるべき物」とする差押令状が必要である(218条2項、同条1項前段)。
しかし、令状なくして行っているため、本件閲覧捜査は218条1項及び2項に反し、違法である。
以上