11/22/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2022年 民法
設問1
両者は判断能力が十分でない者の法律行為の効力を制限する点で共通する。もっとも、行為能力の制限は取消しを一定の者(5条、120条参照)が主張でき取消されるまでは契約が存続するのに対し、意思無能力の場合には契約は当初より成立しない(3条の2)という相違点がある。
設問2
本件の場合、258条の適用を受ける。そのため、裁判所は持分に応じて甲土地を現実に分割する現物分割をすることができる(同条1項1号)。また、共有者のうち一人の単独所有ないし二人で共有させ、残りの者に金銭を支払うという部分的・全面的価格賠償による分割を選択できる(同項2号)。加えて、甲土地を競売にかけ代金を分割するという代金分割の方法を選択できる(同条3項)。
設問3
本件のAB間の甲土地売買契約は、甲土地の個性に着目したものではなく、甲土地1㎡あたり10万円で売却するという内容である。このことから、本件契約は数量指示売買に該当する。
そして、甲土地100㎡を売却する旨が合意されたが、実際には90㎡しかなく契約不適合(562条1項)が存在し、代金減額請求(563条2項1号)をすることができる。また、かかる不適合は「債務の本旨に従った履行」ではなく、確認を怠ったAに帰責性が認められるため、Bは土地不足分の100万円(10万円×10㎡)につき損害賠償請求をすることができる(415条1項)。一方で、上記の表示は代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないため、履行利益の賠償は求められない。また、上記両請求は、数量不足分という同じ損害の救済を求めるものであるため、救済の重なり合いがあり、どちらか一方の請求しか認められないこととなる。
設問4
本件では、BはCに対し甲の所有権(206条)に基づき所有権移転登記抹消登記手続請求をしているところ、Aが婚姻中に甲をCに売却したという事情があるため、この契約の効果がBに帰属しCに甲所有権が移転したかが争点となる。まず、甲の売却につきBはAに代理権を授与していない。また、夫婦生活の便宜を図るための規定である761条の「日常の家事」に当たるかは共同生活に通常必要な法律行為かにより判断されるところ、土地である甲の売却はこれに当らない。もっとも、取引の安全の観点から761条の日常家事代理権を基本代理権になり、夫婦別産制の観点から110条の趣旨が類推適用されるが、Cには甲の売却がAB間の日常家事に属すると信頼する正当な理由はない。したがって、Cに甲の所有権は移転しておらず、上記請求が認められる。
以上