3/30/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
筑波大学法科大学院2025年 憲法
1. 本件不許可処分は、Xの集会の自由(憲法21条1項)を制約し、違憲ではないか。
⑴本件集会は、約300人という多数の者が、護憲という共通の目的の下、一定の場所に集まるものであり、「集会」にあたる。集会は、国民が多様な情報に接して自己の思想・人格を形成、発展させ、相互に情報を交換する場として機能し、対外的に意見を表明する機会を提供するため、かかる自由は、精神的自由の一環として極めて重要な権利であるといえる。
⑵ここで、「集会⋯の自由」は、国家に対して集会のための施設を利用することを求める請求権まで保障するものではなく、本件不許可処分はXの集会の自由を制約していないとも思える。もっとも、集会にとっては、多数の者が一定の場所に集まるという性質上、集会を行う場所の保障が必要不可欠であるといえる。そこで、「公の施設」(地方自治法244条2項)における「集会」については、その利用を国家に妨害されないという自由権が憲法21条1項により保障されると解するべきである。
2. それでは、本件広場は「公の施設」(地方自治法244条2項)に該当するか。
⑴確かに、本件広場は、現市長の市長選出陣式および出馬会見が行われ、また庁舎の利用者も多く公務の円滑な遂行に資する目的で設置されていると思われる側面を持つ。
⑵もっとも、本件広場は、これまでも多くの集会の利用に供されており、特に土日祝日の閉庁日には、かなりの大音量を発する音楽フェスティバル、地元産品をアピールするため酒類を含めた飲食物の提供を伴う行事、核兵器廃絶を訴える集会が行われており、住民の福祉を増進させる目的をもってその利用に供されている側面が強い。したがって、本件広場は、もっぱら公務の為に供されるものとはいえず、「事務又は事業の用に供する建物・・・敷地」たる「庁舎等」に該当するとはいえない。
⑶したがって、本件広場は「公の施設」にあたる。
3. ここで、本件不許可処分につき、「正当な理由」(地方自治法244条2項)が認められるか。
⑴本件では、集会の内容が、市の行政の政治的中立性に疑義が生じ、これに対する住民の信頼が損なわれ、ひいては公務の円滑な遂行が確保されなくなるという支障が生じるおそれがあるとして、本件不許可処分を行っているため、表現内容規制にあたる。また、公共施設の利用拒否は集会の自由に対する事前規制であるため、強度の制約であるといえる。そこで、「正当な理由」が認められるためには、人の生命・身体・財産が侵害される明らかに差し迫った危険の発生が明確に予見されることが必要であると解する。
⑵本件で、Xが所属する団体には、Xらの意見に反対する別団体との抗争歴は一切ないものであるから、人の生命・身体・財産が侵害される明らかに差し迫った危険の発生が明確に予見されるとはいえない。したがって、「正当な理由」は認められない。
4. よって、本件不許可処分は、Xの集会の自由を制約するものであり、違憲である。