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2025年 民事訴訟法 一橋大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 民事訴訟法 一橋大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

一橋大学法科大学院2025年 民事訴訟法

1. Yが取りうる救済方法とその内容は、Xが本件判決に基づく強制執行により満足を得ているか否かで異なるため、以下、場合分けして検討する。

2. Xが本件判決に基づく強制執行により満足を得る前の救済手段
⑴ 控訴の追完(民事訴訟法(以下、法名略)97条、285条)
ア Yは、本件判決の送達を受けた後、控訴期間である2週間内に控訴を提起していない。したがって、控訴期間は経過している。もっとも、本件が「当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合」にあたり、訴訟行為の追完をすることができないか(97条1項本文)。

イ この点、「責めに帰することができない事由」とは、訴訟追行の際、通常人ならば払うであろう注意をしても避けられないと認められる事由をいう。
ウ 本件において、Yは、Xから本件訴えを取り下げる旨の本件合意を得ており、判決送達後もXから「手違いゆえに心配無用」との説明を受け、これを信用して控訴しなかった。Xの言動はYを欺罔するものといえ、Yはそれにより錯誤に陥っていたといえる。そのため、訴訟追行の際、通常人ならば払うであろう注意をしても避けられないと認められる事由があったと言える。したがって、Yは「その事由が消滅した後一週間に限り」訴訟行為の追完をして救済される。
⑵再審の訴え(338条以下)
ア 確定した終局判決に対しては、再審事由がある場合に限り、再審の訴えをもって不服を申し立てることができる(338条1項)。
イ まず、本件においてはXは、本件合意に従わず本件訴えを取り下げず第1回口頭弁論期日に出頭し、認容判決を求め、本件判決がなされ、本件判決の送達を受けたYにも本件訴えを取り下げるかのように嘘をつき本件判決を確定させた。これらのXの一連の行為によりYは既判力の拘束の生じる根拠となる手続保障を欠いているため、同項3号を類推適用し、再審事由とすることができる。ウ 次に、再審の補充性(338条1項ただし書)について検討する。当事者が控訴等により再審事由を主張できた場合、または知りながら主張しなかった場合には、再審の訴えは許されない。本件でXの上記欺罔行為によりYは錯誤に陥っていたといえ、Yが控訴審でこれを主張できたとは言い難く、補充性の要件は満たすと考えられる。
エ したがって、Yは、338条1項3号を類推適用して、「判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内」に限り再審の訴えを提起することが考えられる。

3. Xが本件判決に基づく強制執行により満足を得た後の救済手段
⑴再審の訴え(338条以下)
 Xが強制執行により満足を得た後であっても、1(2)で述べた要件を満たせば、Yは再審の訴えを提起することができる。再審により本件判決が取り消され、請求棄却判決が確定すれば、YはXに対し、強制執行により奪われた金員について不当利得返還請求(民法703条、704条)を行うことができる。しかし、再審の訴えと不当利得返還請求を両方行わなければならず、迂遠となる可能性もある。
⑵再審を経ない不法行為に基づく損害賠償請求
ア Yとしては、再審を経ずに、Xに対し、不法行為(民法709条)に基づき、強制執行によって支払いを余儀なくされた金員相当額の損害賠償を請求することが考えられる。しかし、、確定判決にはその判断内容の後訴における通用力ないし基準性である既判力(114条1項)が生じ、後訴において確定判決の内容、本件ではXのYに対する貸金債権の存在と矛盾する主張を行うことは原則として許されない(既判力の遮断効)。したがって、本件判決が不当であるとして損害賠償を請求することが、既判力に抵触しないかが問題となる。
イ この点について、当該行為が著しく正義に反し、確定判決の規範力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別な事情がある場合には例外的に、損害賠償の請求をすることができる。
ウ 本件についてみると、上述の通りXの行為はYの手続参加の機会を奪う行為であり、また、故意に行っていると考えられる。よって、Xの行為は著しく正義に反し、確定判決の規範力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別な事情があると言える。

エ よって、Yは再審を経ずにXに対し損害賠償請求をすることができる。

4. 以上より、Yを救済するために、Xが満足を得る前であれば、訴訟の追完または再審の訴えの提起をすべきである。他方、Xが満足を得た後であれば、再審の訴え(を経て不当利得返還請求)または再審を経ない不法行為に基づく損害賠償請求をすべきである

                                     以上


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