6/28/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
広島大学法科大学院2025年 憲法
1. (ア)の主張は妥当か。
⑴そもそも、名簿式比例代表制は、各名簿届出政党等の得票数に応じて議席が配分される政党本位の選挙制度であり、本件の非拘束名簿式比例代表制度も、名簿式比例代表制の一態様であるから政党本位の選挙制度である。では、政党本位の選挙制度は、「国民固有の権利」(憲法15条1項)として保障される国民の選挙権を侵害するのではないか。
⑵憲法は選挙制度に関する事項を法律の決定に委ねており(47条)、国会は選挙制度を選択・形成するに際して広範な裁量を有する。では、政党本位である名簿式比例代表制を選挙制度として採用することはかかる裁量に反するか。
憲法は、政党について規定していないが、政党の存在を当然に予定しているものであり、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素である。よって、国会が参議院議員の選挙制度の仕組みを決定するに当たり、上記のような政党の国政上の重要な役割にかんがみて、政党を媒介として国民の政治意思を国政に反映させる政党本位の選挙制度を採用することも国会の裁量の範囲内である。
⑶よって、名簿式比例代表制を採用することは国会による裁量の範囲内であり、国民の選挙権を侵害しない。そして、名簿式比例代表選挙は、政党の選択という意味を持たない投票を認めない制度であるから、本件非拘束名簿式比例代表制の下において、参議院名簿登載者個人には投票したいが、その者の所属する参議院名簿届出政党等には投票したくないという投票意思が認められないことをもって、国民の選挙権を侵害し、憲法15条1項に反するとは言えない。
⑷以上より、(ア)の主張は妥当でない。
2. (イ)の主張は妥当か。
⑴まず、選挙人が当選人を直接に選挙する原則である直接選挙と43条1項の関係について、43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定めるのみであり、その文言上、同項が直接に直接選挙について言及しているわけではない。よって、同項は直接選挙について規定しているとは言えない。したがって、非拘束名簿式比例代表制は同項に反しない。
⑵そして、たとえ同項が直接選挙について定めていたとしても、直接選挙は憲法の沿革に鑑みると、間接選挙制の禁止を裏側から表現しているに過ぎず、その具体的意味内容は、「選挙人が特定の候補者個人を直接に選択すること」ではなく、「当選人の決定に選挙人以外の者の意思が介在することを禁止する」というものであると解される。そして、本件の非拘束名簿式比例代表制は、投票の結果、すなわち当選人が選挙人の総意により決定される点において、当選人の決定に選挙人以外の者の意思が介在しているとは言えないから、直接選挙に当たらないということはできず、同項に反するとは言えない。
⑶以上より、(イ)の主張は妥当でない。
以上