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2021年 民事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 民事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】

6/30/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

明治大学法科大学院2021年 民事訴訟法

1. 小問1

⑴ 前段
 本件の訴訟物は、売買契約に基づく代金支払請求権であるところ、その請求原因は売買契約の成立である。そして、弁済の事実は、かかる請求原因事実と両立し、代金支払請求権を消滅させる効果を有する事実であるから抗弁にあたる。したがって、弁済の事実が認められる場合、裁判所は全部棄却判決をすることになる。

⑵ 後段
 既判力は、訴訟の弾力化の観点から、「主文に包含するもの」すなわち訴訟物たる権利義務ないし法律関係の存否の判断に生じる(民事訴訟法(以下略。)114条1項)。本件では、売買契約に基づく代金支払請求権の不存在につき既判力が生じる。

2. 小問2

⑴ 前段の場合

ア 判決
 本件の訴訟物は売買契約に基づく代金支払請求権であるところ、上記のとおり請求原因は売買契約の成立である。そして、相殺の事実はかかる請求原因事実と両立し、代金支払請求権を消滅する事実であるから抗弁にあたる。
 本件では、500万円の代金支払請求権が訴訟物となっており、反対債権の額が700万円と認定されていることから、500万円全額が相殺によって消滅することとなり、裁判所は全部棄却判決を下すべきである。

イ 既判力

 既判力は、「主文に包含するもの」すなわち訴訟物たる権利義務ないし法律関係の存否の判断に生じる(114条1項)。また、相殺の抗弁については理由中の判断であっても既判力が生じる(同条2項)。

 したがって、売買契約に基づく代金支払請求権の不存在及び、反対債権500万円の不存在の判断に既判力が生じる。

⑵ 後段の場合

ア 判決
 後段の場合は、反対債権が300万円の範囲で認められたにすぎないから、相殺の抗弁は300万円の範囲でしか認められない。
 したがって、300万円の限度で相殺が認められることになるため、裁判所は200万円の範囲で一部認容判決を下すべきである。

イ 既判力
 後段の場合、既判力は売買代金支払請求権が200万円存在すること及び、反対債権の300万円の不存在の判断につき既判力が生じる。

3. 小問3

⑴ かかる反訴提起が二重起訴の禁止(142条)に抵触しないか。
 この点、相殺の抗弁は「訴え」にあたらないから142条を直接適用することはできない。もっとも、同条の趣旨は、審理の重複による被告の応訴の煩の防止・訴訟経済の確保、判決の矛盾抵触の回避にある。ここで、相殺の抗弁は確かに「訴え」には当たらない。しかし、114条2項によって相殺の抗弁の判断につき既判力が生じることから、判決に矛盾抵触が生じるおそれがあるし、審理が重複する。したがって、上記趣旨が妥当するといえる。そのため、142条の類推適用の基礎があるといえる。
 そして、二重起訴にあたるか否かは審判対象の同一性と当事者の同一性から判断する。
 これをみるに、本件本訴における相殺の抗弁の審判対象はYの貸金債権であり、反訴の審判対象もYの貸金債権であるから、審判対象が同一といえる。また、両訴訟とも当事者はXとYである。
 したがって、142条類推適用により反訴提起は許されないのが原則的結論である。

⑵ もっとも、本件においては、申立ての趣旨を合理的に解釈し、反訴請求は本訴において相殺の抗弁について既判力ある判断が示された場合には反訴請求しない趣旨の予備的反訴に変更されるものとる解するべきである。
 このように解すれば審理の重複のおそれはないし、予備的反訴は弁論の分離が許されていないから判決の矛盾抵触の恐れもない。

⑶ したがって、本件反訴提起は二重起訴の禁止(142条)に抵触せず適法な反訴提起である。

4. 小問2

⑴ 前段

ア 控訴の利益の有無が問題となるところ、申立ての内容と判決を比較し、質的・量的に後者が不利であるか否かをもって判断するべきである。なぜならば、処分権主義(246条参照)の下、自らの責任で審判対象を設定し全部勝訴した者に、上訴による不服申し立てを認める必要はなく自己責任を問い得るからである。
 もっとも、全部勝訴判決であっても、後訴で自己責任を問うのが不当である場合には、例外的に控訴の利益を認めるべきである。

イ 本件では、たしかに、請求棄却判決によってYが全部勝訴しているから控訴の利益が無いようにも思える。しかし、Yが全部勝訴判決を得たのは、訴訟において、自己の貸金債権を自働債権とする相殺の抗弁が認められたことによる。相殺の抗弁は、その判断に既判力が生じる(114条2項)ため、相殺に供した債権について後訴で請求することができなくなってしまうところ、これは自己の申立てによるものではなく自己責任をといえない。

ウ したがって、控訴の利益が認められる。

⑵ 後段
 弁済の抗弁が認められた場合、訴訟物たる売買代金支払請求権は消滅することになる。一方で、弁済の抗弁が認められ、売買代金支払請求権が消滅したことで、相殺の抗弁を判断する必要がなくなるので、貸金債権は消滅しないことになる。そして、かかる貸金債権の復活は、控訴人Yの申立ての範囲内であるから不利益変更禁止の原則(296条1項、304条)にも反しない。
 したがって、裁判所は、弁済の抗弁によって請求が棄却される旨の判決を下すべきである。

以上

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