7/22/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2022年 民事訴訟法
⑴ 甲土地に関する原告Xの所有権が訴訟物となる。
なぜなら、本件訴訟は確認訴訟であるところ、確認の訴えの訴訟物は原告が主張する特定の権利義務ないし法律関係の存否であり、これは旧訴訟物理論によるか新訴訟物理論によるかによる結論の差異は生じないからである。
(2) 積極否認である。
抗弁とは、自己が証明責任を負う、相手方の主張と両立する事実のことを指す。本件では、平成 24 年 3 月 2 日の時点でBが甲土地を所有していたことについて権利自白が成立しているため、XとしてはBX間の売買契約の成立を請求原因の1つとしている。しかし、YによるBY間の売買の主張は上記請求原因事実と非両立のため、抗弁ではなく積極否認であるといえる。
(3) 民事訴訟では、所有権の来歴の全てを証明することは実質的に不可能に近い場合が多いこと、所有権が日常的な概念であり一般人にとっても理解が容易であることから、所有関係に争いのない時点まで遡りその時点における権利自白を認めることで便宜を図っている。
本件でも平成 24 年 3 月 2 日の時点でBが甲土地を所有していたことには権利自白が成立している。もっとも、事実と異なり権利の存否や法律効果の発生等について判断するのは裁判所の専権であり、裁判所は当事者の権利自白には拘束されないと考える。よって、権利自白の成立したB所有を否定し、Xの主張を排斥することは可能である。
したがって、裁判所は、Xの請求を棄却する判決を出すことができる。
以上