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2025年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2025年 民法

設問1

1. 請求の根拠
 AのCに対する請求の訴訟物は、所有権に基づく妨害排除請求権としての、建物収去土地明け渡し請求であり、その要件は①Aの甲土地所有、②Cの甲土地占有である。

2. ①について

⑴まず、Aは甲土地を2023年1月10日、Bに対して売り渡す契約を締結しているため、この時点で甲土地の所有権はBに移転している。

⑵ア もっとも、AはBに対して解除を主張して、自身への所有権の帰属を主張すると考えられるが、これが認められるか問題となる。

イ解除の要件(民法(以下、法令名略)541条)

(ア)AとBは上記売買契約の締結に当たり、代金の残額2000万円については毎月末に20万円ずつ分割して支払うという約定が締結されている。
 したがって、BはAに対し、上記内容の債務を負っていたが、2024年1月16日において残代金債務について3か月の分割払いが滞っているため、「当事者の一方がその債務を履行しない場合」に当たる。

(イ)そして、AはBに対して、同日1か月以内に残債務を弁済するように「催告」しており、相当期間経過後の2024年2月19日に解除の意思表示をしている。

(ウ)また、3か月間支払いが滞っていたことからすれば、債務の不履行が「軽微」であるとは言えない。

(エ)したがって、AのBに対する売買契約の解除は有効である。

ウ 解除の法的効果(545条1項)

 次に解除の法的効果が明文なく問題となるが、解除の趣旨は、契約の当事者を契約の債務から解放することにある。そこで、解除によって契約は遡及的に無効になると解する。
 したがって、本件でAは遡及的に甲土地の所有権を獲得する(➀充足)。

3. ②については、問題文から明らかに認められる。

4. 賃借権による占有権限の抗弁

⑴本件において、BはCに対し、甲土地を賃貸する契約を締結し、その契約に基づいて甲土地を引き渡した。もっとも、上記の通り、甲土地の売買契約は遡及的に無効となるのであるから、上記賃貸借契約時においてBは無権利者となり、上記契約は他人物賃貸借となる(559条561条)。したがって、契約の相対効によって、Cは賃借権をA対して対抗できないのが原則である。

⑵ア もっとも、Cはいわゆる解除前の第三者(545条1項但書)として、保護されないか問題となる。

イ この点、同項但書の趣旨は、遡及効によって害される第三者を保護することにある。したがって、「第三者」とは、解除された契約から生じた法律関係を基礎として解除までに新たな利害関係を取得したものをいうと解する。
 そして、解除の表意者は何らの帰責性がないのであるから、第三者が保護されるためには、権利保護要件としての対抗要件の具備が必要であると解する。

ウ 本件において、CはAB間の売買契約に基づいてBに所有権が帰属することを前提として同売買契約が解除される前に、甲土地についての賃貸借契約をBとの間に締結しており、Cは解除された契約から生じた法律関係を基礎として解除までに新たな利害関係を取得したものに当たる。
 また、借地権の対抗要件は、土地上に借地権者が登記されている建物を所有することである(借地借家法10条1項)が、本件では、Cは甲土地上に乙建物を建設し、所有権保存登記をしているのであるから、Cは甲土地借地権の対抗要件を具備している。

⑶したがって、Cは「第三者」として、甲土地の賃借権をAに対抗することができる。
 よって、AのCに対する請求は認められない。

設問2

1. 請求の根拠AはCに対して、賃貸借契約に基づく、2024年4月分の賃料支払い請求をすることはできるか。

⑴請求原因は、賃貸借契約の締結、賃貸借契約に基づく引き渡し、賃料支払い債務を発生させる一定期間の経過、支払い時期の到来である。

⑵本件で、甲土地について、BC間で賃貸借契約が締結されていた。そして、AB間で甲土地の売買契約が解除され、甲土地の所有権は、BからAに移転した。ここで、賃借人Cは、甲土地上にCの所有権保存の登記がされた乙建物を所有しており、借地借家法10条の対抗要件を備えているところ、民法605条の2第1項より、賃貸借の対抗要件を備えた場合、不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、譲受人に移転する。
 本件では、BからAに甲土地の譲渡はされていないため、605条の2第1項を直接適用することはできない。もっとも、解除の遡及効も法的擬制にすぎないと解すれば、契約解除による債務者から債権者への復帰的物権変動を観念することができる。そこで、売買契約の解除により賃貸不動産の所有権が移転した場合にも、605条の2第1項が類推適用できる。
 したがって、賃貸人たる地位はBからAに移転するため、AC間で賃貸借契約が締結されているといえる。そして、賃貸借契約に基づき、甲土地はCに引き渡されている。
 そのため、支払い時期が到来していれば、請求原因を満たす。

2. 反論①

⑴605条の2第2項の類推適用によって、賃貸人たる地位は移転していないと主張すると考えられる。605条の2第2項の趣旨は、賃貸不動産の所有権を譲受人に移転する一方で賃貸人たる地位を譲渡人に留保しておく必要性があることである。
 そして、解除の遡及効の場合にも、復権的物件変動が観念できるのであるから、賃貸不動産の所有権を譲受人に移転する一方で賃貸人たる地位を譲渡人に留保しておく必要性があり、605条の2第2項の趣旨が妥当する。
 したがって、解除の場合にも605条の2第2項の類推適用は認められると解する。

⑵しかし、本件においては、問題文において「賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をした」といえるような特段の事情はなく、上記反論は妥当しない。

3. 反論②

⑴次に、CはBからAに賃貸人たる地位が移転するとしても、既にBC間の賃貸借契約は終了しているため、AのCに対する賃料請求は認められないと主張すると考えられる。

⑵まず、賃借物の使用収益が困難になった場合には、賃貸借は終了する(616条の2)。
 そして、他人物賃貸人の対象物を賃借人に使用収益させる義務は、所有者が賃借人に引き渡し請求した時点で、履行不能になり、それによって賃貸借契約も終了すると解されるところ、本件においても、2024年3月18日にAが明け渡し請求した時点でBC間の賃貸借契約は終了することになる。そうすると、AのCに対する請求は認められないとも思える。

⑶しかし、本件においては、Cは解除前の第三者であり、そもそもAはCに対して他人物賃貸借であることを主張することはできないのであるから、AがCに明け渡し請求をしても甲土地についての賃貸借契約が履行不能として終了することはないと考えられる。
 したがって、上記反論は妥当しない。

以上

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