5/16/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
九州大学法科大学院2025年 刑事訴訟法
問1⑴
訴因変更の限界に関する条文上の根拠は、312条1項であり、「公訴事実の同一性」が認められる範囲で、訴因変更は認められる。
問1⑵
同一の犯罪について二重に処罰することは、二重起訴禁止(338条3号)、一事不再理の原則(337条1号)に反する。
問2
訴因変更制度は、共通する1個の刑罰権の枠内に含まれる紛争の一回的解決を図るものである。そうすると、「公訴事実の同一性」は、訴因変更の限界として審判手続の広がりの限界を画すると共に、その裏返しとして、二重起訴、一事不再理効、不告不理原則等の及ぶ範囲を画することで、被告人の防御権を保護するものである。そこで、両訴因の犯罪を構成する基本的事実関係が社会通念上同一と認められる場合には、、共通する1個の刑罰権の枠内に含まれるから、「公訴事実の同一性」が認められると解する。
一方で、基本的事実関係が全く異なる場合には、両訴因が犯罪事実として両立せず、犯罪としても両立し得ないのであったとしても、直ちに「公訴事実の同一性」を肯定するべきではない。そのため、判例は、両訴因が単に両立しない関係にあることを理由に公訴事実の同一性を肯定することはしなかったと考えられる。
問3⑴
刑事訴訟における審判対象は、訴因である。
当事者主義的訴訟構造(256条6項、312条1項、298条1項など)の下、一方当事者たる検察官が主張する具体的犯罪事実たる訴因を審判対象と考えるべきだからである。職権主義を強調して、訴因に掲げられていない背後の事実を含む公訴事実を審判対象と見る考え方は、判例や実務の掲げる訴訟構造に反しており、与し難い。
問3⑵
審判対象の画定は、いかなる行為に刑事実体法を適用するかという問題である。訴因を審判対象とするというのは、訴因にかかげられた行為の存否を判断し、当該行為に刑事実体法を適用した結果いかなる犯罪が成立するかという点が問題となる。これに対して、、二重処罰にあたるかというのは、歴史的事実としての1つの行為に関して、二重に刑罰法規を適用していないかということを問題とするものである。
両者は全く別場面の話であって、審判対象を訴因とすることと、二重処罰の危険を公訴事実の同一性を基準に判断することとは、全く矛盾しない。