7/21/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2022年 憲法
1. Eが反対したにもかかわらず、CがA国との経済ミッションを予定通り進めるよう指示した行為は、閣議の全会一致の原則に反しないか。
⑴ 内閣総理大臣は、内閣を代表し、閣議で決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督する権限を有する(72条)。そして、内閣は合議制の期間であり、その意思決定は閣議によって全員一致でなされなければならない。全員一致の趣旨は合議により慎重に意思決定をする点にあるから、閣議を開いて採決を行い、全員一致を確認しなければならないと解するべきである。本件では、全員一致を確認していないため、閣議で決定した方針が存在せず、内閣の意思が形成されているとは言えない。
⑵ では、閣議で決定した方針がない場合、内閣総理大臣は行政各部を指揮監督できないか。
ア 現行憲法では内閣総理大臣を内閣の「首長」(66条1項)とし、その権限と地位を強化している。そのため、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し指導、助言などの指示を与える権限を有すると解するべきである。
イ 本件では、たしかにEがA国への経済制裁を主張している者の、他の閣僚は賛否を 述べず、閣内の意見もまとまっていなかった。そのため、A国との経済関係を断絶することが内閣として明示的に決定したとは言えない。そして、D内閣時代の閣議決定でも、クーデター政権についてただちに経済制裁を行う方針までは明示されていない。そのため、A国との経済ミッションは、内閣の明示の意思に反するとは言えない。
ウ よって、CはA国との経済ミッションを進めるよう指示する権限を有する。
⑶ 以上より、Cの指示は閣議の全会一致の原則に反しない。
2. では、Eは罷免を違法として罷免後の報酬請求権を有するか。
「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」(68条2項)。その趣旨は、内閣の方針に反対する大臣を罷免することで内閣の一体性を確保する点にある。ついては国務大臣閣議が全会一致で行われることから、国務大臣は、内閣の一体性を保持しなければならない。
そして、EはHに閣内の状況を伝え、内閣の一体性を乱すような行為を行っているから、Eがそのまま内閣にとどまると内閣の一体性が損なわれる危険がある。
そのため、Eの罷免は合憲・適法である。したがって、合憲・適法な罷免後の報酬請求権は存在しないため、Eの請求は認められない。
以上