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2024年 商法 広島大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 商法 広島大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

広島大学法科大学院2024年 商法

第1問

1. 会社法299条3項は、取締役会設置会社が招集通知を電磁的方法で行う場合、あらかじめ株主の承諾を得なければならないと定める。大会社・公開会社であっても例外はない。したがって、本記述は誤りである。

2. 株主は総会当日に目的(議題)を追加する権限を有しない(303条・304条)。取締役の解任を目的に加えるには所定の事前手続が必要である。したがって、本記述は誤りである。

3. 309条1項は「定款に別段の定めがある場合」を認めており、定款で定足数条項を置かず、出席株主の過半数で普通決議が成立すると定めることが可能である。したがって、本記述は正しい。

4. 189条1項により、単元未満株式には議決権が付与されないと直接規定されているため、定款の有無は関係しない。したがって、本記述は誤りである。

5. 最判昭和60年12月20日は、招集手続に瑕疵があった場合でも、株主全員が同意し出席した総会の決議は有効と判示した。したがって、本記述は正しい。

6. したがって、正しいものは③及び⑤である。

第2問

1. 株主総会決議取消しの訴え(831条)を認容する判決が確定した場合、決議の効力は決議の時に遡って否定される(839条反対解釈)。したがって、本記述は正しい。

2. 830条2項が認める無効事由は「決議の内容が法令に違反する場合」に限られる。定款違反は取消事由(831条1項2号)であって無効事由ではない。したがって本記述は誤りである。

3. 「決議の取消しにより…取締役…となる者も、同様とする。」と原告適格が認められているため、取消訴訟を提起できる(831条1項後段)。したがって、本記述は誤りである。

4. 会社の組織に関する訴えで請求を認容する確定判決は、第三者に対しても効力を有する(838条)。したがって、本記述は正しい。

5. 特別利害関係人による議決権行使で「著しく不当な決議」が成立した場合は、831条1項3号に該当し、株主は取消訴訟を提起できる。したがって、本記述は正しい。

6. よって、誤っているものは②及び③である。

第3問
1. A、B及びCのXに対する会社法上の損害賠償責任について、429条1項に基づき検討する。
 まず、同項は、株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存する者であることを考慮して、第三者保護の立場から取締役に課された法定責任であるため、その要件は広く解するべきである。そこで、「悪意又は重大な過失」は任務懈怠について存すれば足りる。

2. Aの責任について
⑴Aは甲社の代表取締役であるから「役員等」に当たる。
⑵Aは、甲社の資金繰りが悪化し、令和5年3月時点で翌月の決済資金を確保する目処が立っていないという経営破綻寸前の状態にあることを認識していた。それにもかかわらず、Aはこの事実を隠蔽した上で新春入学キャンペーンを実施し、Xを含む複数の者との間で入塾契約を締結させ、入学金や授業料の前払金を受領した。このような行為は、近い将来に契約上の役務提供ができなくなる蓋然性が極めて高い状況下で、それを秘して契約を締結し、相手方に財産的損害を与える可能性の高い行為であり、善管注意義務(330条、民法644条)及び忠実義務(会社法355条)に違反するものであり、「その職務を行うについて」の任務懈怠が認められる。
⑶Aは、甲社の深刻な経営状態を認識しながら上記キャンペーンを実施していることから、「悪意」があったと認められる。
⑷Xは、Aの行為により甲社と契約し前払金を支払ったが、甲社の経営破綻によりその大半を回収できなくなったという「損害」を被っており、Aの任務懈怠とXの損害との間には相当因果関係が認められる。
⑸よって、AはXに対し、429条1項に基づく損害賠償責任を負う。

3. Bの責任について
⑴Bは甲社の取締役であるから「役員等」に当たる。
⑵Bは経理担当取締役として甲社の経営状態を掌握しており、令和5年3月時点で翌月の資金繰りの目処が立たないことを認識し、その旨をAに報告していた。Bは、そのような危機的な状況下でAが新春入学キャンペーンを実施することを知りながら、これに対して特に異議を唱えなかった。甲社は取締役会設置会社であるから(327条1項1号)、取締役は取締役会の構成員として、代表取締役の業務執行を監督する義務を負う(362条2項2号)。本件では取締役会が開催された形跡はないが、BはAの独断専行を認識していた以上、取締役会の開催を要求する、他の取締役に相談・報告する等の措置を講じ、あるいは少なくともAの行為に対して明確に反対意見を表明し、その旨を議事録等に残すよう努めるべきであった。それを怠り、Aによる明らかに不適切かつ第三者に損害を与える危険性の高い業務執行を看過したことは、取締役としての監視義務違反にあたり、任務懈怠が認められる。
⑶Bは、会社の経営破綻の可能性と、キャンペーン実施による第三者への損害発生の危険性を十分に認識しながらこれを放置したものであり、任務懈怠につき少なくとも「重大な過失」があったと認められる。
⑷上述の通り、Xは「損害」を被っており、Bの任務懈怠がなければ、Aのキャンペーン実施が阻止され、Xが損害を被ることはなかった可能性があるため、Bの任務懈怠とXの損害との間には相当因果関係が認められる。
⑸よって、BはXに対し、429条1項に基づく損害賠償責任を負う。

4. Cの責任について
⑴Cは、名目的な取締役であるが、適法な選任決議を経ている以上「役員等」に当たる。
⑵CはAの妻であり、Aから言われるままに名目的に取締役に就任したに過ぎず、専業主婦であって甲社の経営に全く関与しておらず、経営破綻前の経営状態も知らなかった。
  しかし、いわゆる名目的取締役であっても、取締役に就任した以上、代表取締役の業務執行の全般につきこれを監視し、業務の執行が適正に行われるようにするべき職責を有するのであり、善管注意義務及び他の取締役に対する監視義務を負う。
  本件では、代表取締役Aによる独断専行が行われ、取締役会も開催されていなかったという異常な経営状態にあったにもかかわらず、Cは取締役としての職務を全く執行せず、このような状態を漫然と放置していた。これは、取締役としての基本的な監視義務等を怠ったものとして、任務懈怠が認められる。
⑶Cの任務懈怠に「悪意又は重大な過失」があったかについて、Aは取締役会を開催したことがなく、Cは専業主婦であって甲社の経営に全く関与しなかったのであるから、上記監視義務違反につき悪意または重大な過失があったとは言えない。

⑷よって、CはXに対し、429条1項に基づく損害賠償責任を負わない。

5. 結論
 以上より、A及びBのみ、Xに対し、429条1項に基づく損害賠償責任を負う。

以上

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