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2025年 公法系 岡山大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 公法系 岡山大学法科大学院【ロー入試参考答案】

6/23/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

岡山大学法科大学院2025年 公法系

1. 公職選挙法138条1項(以下「本件規定」)は、憲法(以下略)21条1項に反し、違憲ではないか。

⑴「表現の自由」とは、思想を外部に表明する行為をする自由をいう。選挙運動は、自己の政治的思想を端的に示すものとして、「表現」に当たるから、選挙運動の自由は、「表現の自由」21条1項により保証される。

⑵本件規定は、選挙運動の一環である戸別訪問を禁止するものだから選挙運動の自由を制約するものと言える。

⑶ ここで、選挙がその本来の意義を発揮するには、有権者が必要かつ十分な判断資料に接することが必要であり、選挙運動は民主政の運営に必要不可欠な政治的表現であり、自己統治の開智が強く妥当する。このような選挙運動の中でも戸別訪問は、候補者と選挙人が直接に接触し、候補者はその政策を伝え、選挙人も候補者の識見、人物などを直接に知りうる機会を与えるものとして最も有効適切な選挙運動の方法である。そのため、個別訪問は選挙運動の中核をなす極めて重要な権利である。
 一方で、選挙運動は、あらゆる言論が必要最小限度の制約の下に自由に競いあう場ではなく 、各候補者は選挙の公正を確保するために定められたルールに従って運動すべきであり、かかるルールの設定においては国会の裁量権の幅が広く、その立法政策にゆだねられているところが大きい。
 また、数ある選挙運動の方法の中で一つの選挙運動の方法を禁止するという意味で一部規制であるし、本件規定は表現内容に着目して規制するものではなく、戸別訪問という表現手段を取ることによる弊害を除去するための規定であって間接的、付随的な制約であるという意味で表現中立規制である。そのため、規制態様が強いとは言えない。
 よって、中間審査基準によるべきであり、目的が重要で、手段が目的と実質的関連性を有する場合には本件制約は正当化されると考える。

⑷本件規定の目的は、①買収利害誘導などの温床になり易い、②選挙人の生活の平穏を害する、③候補者にとっても訪問回数等を競う煩に耐えられない選挙運動であり、多額の出費を余儀なくされる、④投票が情実に支配され易くなるなどの戸別訪問の弊害を防止し、もって選挙の自由と公正を確保することであり、選挙が議会制民主主義に不可欠なものであることに照らすとかかる目的は重要である。
 次に手段の目的適合性についてみるに、戸別訪問には①候補者と選挙人が家という密室で会うことになるため買収利害誘導などの温床になり安く、②候補者が家に直接くるため選挙人の生活の平穏を害し、③訪問回数が多ければ多いほど選挙人にその政策を伝える機会が増えることから、選挙運動の効果が上がるため、候補者にとっても訪問回数等を競う煩に耐えられない選挙運動であり、多額の出費を余儀なくされる結果、資金が潤沢な候補者が有利となり、④候補者と選挙人が直接接するため投票が情実に支配され易くなると言う、選挙の自由と公正に関する弊害がある。そのような戸別訪問を禁止することにより、選挙の自由と公正は確保されるため、本件規定は目的に適合する。
 また、手段の必要性についてみるに、たしかにイギリス、ドイツ及びアメリカ合衆国などにおいては、選挙中の戸別訪問は禁止されておらず、規制手段として過剰であるとの反論もある。しかし、諸外国と立法事実を同じくすると考えるだけの資料はないし、戸別訪問を禁止しても他の選挙運動手段はあることから本件規定による不利益は小さいため、本件規定は過剰なものとはいえない。
 さらに、公職選挙法239条3号が刑事罰を規定している点で過剰であるとの反論も想定されるが、本件のように一定の表現行為を一律に禁止する場合には、規制対象が明確であるから萎縮的効果は問題とならず、刑事罰が規定されていることは、手段の相当性を左右しないと考える。
 よって、本件規定の目的は重要であり、その手段は目的と実質的関連性を有すると言える。

2. 以上より、本件規定は21条1項に反さず、合憲である。

以上


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