広告画像
2022年 公法系  東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2022年 公法系 東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東京大学法科大学院2022年 公法系

問1

1. 店舗販売業者による「要指導医薬品」の販売に際して、薬剤師による対面での情報の提供及び指導を行わせることを義務付けている薬機法36条の6第1項の規定(以下、「本件規制」という。)は、店舗販売業者の営業の自由(憲法22条1項。以下、当該法令名は省略する。)を不当に侵害し、違憲となるのではないか。

2. 22条1項は、職業選択の自由を保障している。そして、職業は、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己の持つ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連性を有するものである。このような職業の性格、意義に照らすと、22条1項は、職業選択の自由のみならず、選択した職業の遂行自体、すなわち職業活動の自由をも保障すると解すべきである。

3. 本件規制は、店舗販売業者に対し、要指導医薬品を販売等する場合には、薬剤師に、対面により、書面を用いて必要な情報を提供させ、指導を行わせることを義務付けており、インターネット等を通じた郵便販売を禁止している。したがって、店舗販売業者の営業の自由が制約されている。

4. 職業は、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるため、精神的自由と比較してより強い公権力に規制を受ける。そして、職業の自由の規制目的は積極目的から消極目的まで多様であり、規制態様もそれぞれの事情に応じて異なる。そのため、職業の自由は、「公共の福祉」の範囲内で、立法府の合理的裁量に基づく規制に服し、その合理的裁量の範囲内かどうかは、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして決すべきである。そこで、上記事情に照らし、立法府の合理的裁量の範囲を逸脱する場合には、本件規制は違憲となると解する。
 本件規制の目的は、需要者の選択により使用される医薬品としての安全性の評価が確定していない要指導医薬品について、その不適正な使用による国民の生命、健康に対する侵害を防止すること等にあり、公共の福祉に合致することは明らかである。
 そして、上記目的を達成するため、要指導医薬品の販売等をする際に、薬剤師が適切な指導と指導内容の理解の確実な確認を行う必要があるとすることには相応の合理性がある。また、対面による情報提供及び指導により、理解を確実に確認することが可能となる一方で、それ以外の方法による場合には、対面の場合と比べて劣るという評価が不合理であるとはいえない。
 また、要指導医薬品の市場規模は、要指導医薬品のそれと一般用医薬品のそれとを合わせたものの1%に満たない程度であり、需要者の選択により使用される医薬品全体に占める要指導医薬品の市場規模はごく僅かである。
 さらに、本件規制は要指導医薬品の郵便等販売を禁止するにすぎず、対面販売は禁止されていない点で、職業選択の自由の規制ではなく、職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまり、その制限の程度が大きいともいえない。
 したがって、本件規制は、立法府の合理的裁量の範囲内である。

5. よって、本件規制は合憲である。

問2

 要指導医薬品に関する薬機法36条の6第1項は、要指導医薬品の販売等について、店舗において販売等に従事する薬剤師に、対面により、書面を用いて必要な情報を提供することを義務付けている。
 これに対し、一般用医薬品のうち第一類医薬品に関する薬機法36条の10第1項は、第一類医薬品の販売等について、店舗において販売等に従事する薬剤師に、書面を用いて必要な情報を提供することを義務付けているにすぎず、第二類医薬品に関する薬機法36条の102項は、際に類医薬品の販売等について、店舗において販売等に従事する薬剤師又は登録販売者に、必要な情報を提供させるよう努力義務を定めているにすぎない。
 これらの規定を比較すると、要指導医薬品については対面での書面による情報提供が義務付けられているのに対して、一般用医薬品については対面以外の方法、すなわち郵送等によって情報提供等をすることが認められていると考える。
 したがって、薬機法は、店舗販売業者による一般用医薬品の郵便等販売を禁止していない。

問3

1. 問題の所在

 問2のように、薬機法は、店舗販売業者による一般用医薬品の郵便等販売を禁止していない。それにもかかわらず、省令によって一般用医薬品の対面販売を義務付けることは、薬機法の委任の趣旨を逸脱するのではないかが問題となる。

2. 判断基準

 省令を定めるに当たっては、当該省令がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない(行政手続法38条1項)。そして、法令の趣旨に適合するか否かは、授権規定の文理、授権法による委任の趣旨、授権法の趣旨・目的および仕組みと整合性、委任命令によって制限される権利ないし利益の性質等を考慮すべきである。また、憲法上の権利の制約となる場合には、憲法上の権利を保護する観点から、授権の趣旨が、規制の範囲や程度に応じて、根拠法令の規定から明確に読み取れることを要するというべきである。

3. 第一類医薬品

 省令を定める根拠となる法令である薬機法は、店舗販売業者による要指導医薬品の対面販売を義務付けているのに対し、第一類医薬品を含む一般用医薬品の対面販売を義務付けていない。そして、対面販売を義務付けることは郵便等による販売を禁止するものであり、営業の自由という憲法上の権利を制約するものである。また、第一類医薬品は、副作用等により日常生活に支障を来たす程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なもの(薬機法36条の7第1項1号)であるものの、郵便等販売を認めたとしても、書面による情報提供及び指導をすることによって、「保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止」(薬機法1条)を実現することは十分可能である。さらに、薬機法の規定から、省令によって第一類医薬品の郵便等販売を規制する内容の条例の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れるともいえない。
 したがって、第一類医薬品について対面での情報の提供および指導を行うことを義務付ける省令の規定は、薬機法の委任の範囲を逸脱し、違法である。

4. 第二類医薬品

 薬機法が第二類医薬品について対面販売を義務付けていないことは、第一類医薬品と同様である。そして、第二類医薬品は、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品である(薬機法36条の7第1項2号)が、第一類医薬品のようにその使用に関し特に注意が必要とされていない。また、第一類医薬品と異なり、書面によることまでは要求されていない。そうだとすれば、郵便等販売を認めたとしても、情報提供によって、「保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止」(薬機法1条)を実現することは可能である。さらに、薬機法の規定から、省令によって第二類医薬品の郵便等販売を規制する内容の条例の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れるともいえない。
 したがって、第二類医薬品について対面での情報の提供および指導を行うことを義務付ける省令の規定は、薬機法の委任の範囲を逸脱し、違法である。

以上 

おすすめ記事

ページタイトル
ロースクール

【最新版】ロースクール入試ハンドブック公開!全34校の説明会/出願/試験日程・入試科目・過去問リンクが一冊に!【2026年度入学者向け】

#ロースクール
ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】