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2024年 行政法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 行政法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/4/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

同志社大学法科大学院2024年 行政法

問1

1. 特許は、本来国民の自由の範囲内には含まれていない行為を、行政が許すことによってその権利を与える性質を持つ。そのため、本来国民が有しない権利である以上、それに特許を与えなくとも権利侵害を観念することはできないから、特許付与の行為には原則として広範な裁量が認められる。

2. 一方、許可は、国民の自由の範囲内に含まれる事項であるものの他者との権利の衝突防止やその他利益衡量の必要性から禁止されている行為に対し、個別的に許しを与える行為である。そのため、本来国民が有する権利に一定の制約を課して一般的禁止をしている以上、特許付与行為よりもその裁量は狭いものと考える。

3. 以上の意味において、両者は裁量の広狭に最大の差を生じる。

問2

1. 道路占用許可にY県の裁量が認められるのはなぜか。

2. この点、前述の通り、道路占用許可が特許にあたる場合には行政庁たるYに広範な裁量が認められることになる。そこで、道路占用許可の法的性質につき以下論ずる。

3. そもそも、道路は本来一般交通の用に供される態様においてのみ利用されることが予定されている公の営造物であり、本来の用途以外で個々人が自由に利用することは許されていない。道路法(以下略)1条も、この法律の目的を「交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進」するものとし、道路が公的性格を有することを明らかにしている。
 そして、例外的に土地の効率的利用の観点等から、道路占用許可を受けることによって、個人による道路の継続した独占利用を認めているのである(32条)。
 また、33条1項は同条2項規定の基準に適合した場合であっても、「許可を与えることができる」とし、要件に該当すれば直ちに道路占用許可を与えなければならないという法的仕組みは採用されておらず、道路占用許可について行政庁の効果裁量を認めているといえる。

4. 以上を踏まえれば、道路占用許可は本来国民の自由の範囲内には含まれていない道路の占有使用という行為を、行政が許すことによってそれを可能なものとする性質を有するのであり、特許行為に該当する。

5. よって、道路占用許可にはY県の裁量が認められるのである。

問3

1.      本件訴訟において、X主張の(ア)、(イ)にもとづいて、Y県に裁量権の逸脱濫用が認められるか。

(ア)について 
2. ⑴ X の主張(ア)は、Xは道路占用許可を受けようとするにあたり、根拠規範である道路法33条の要件を満たしているのだから、道路占用許可を発しないことは許されない旨の主張である。

⑵ この点、行政庁の行為が裁量権の逸脱濫用として違法性を帯びるかどうかは、判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法(行政事件訴訟法 30 条)となるものと考える。

⑶ これをみるに、前述の通り、道路占用許可は特許の性質を有する行為である。そのため、Y県には道路法規定の要件を満たしていても許可をしないという効果裁量が認められるのであって、要件充足により直ちに道路占用の不許可が裁量権の逸脱濫用に当たるものではない。また、その他に、後述の(イ)の事情を除いてY県による道路占用不許可を違法としうるだけの事情は存在しないため、(ア)の主張は認められない。

(イ)について
3. ⑴ 裁量権の逸脱濫用について、前述の規範に基づき同様に考える。
 この点、仮にXの主張する(イ)が事実であった場合には、Y県は本来Xに対し本件区画の全ての明け渡しを求めなくとも全面工事が可能であった。それにもかかわらず、Y県が事前の調査を怠ったがためにXに過剰な負担を課したものと考えられるのであって、標準的な工法に変わる異なる工法の存在を考慮しなかったという点を捉えて、考慮不尽を基礎づけるものである。

⑵ 以上より、Xの主張する(イ)が真実であった場合には、考慮不尽として裁量権の逸脱又は濫用となり違法となる。

以上

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