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2023年 行政法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 行政法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

北海道大学法科大学院2023年 行政法

問1

1. 銃刀法14条1項は、「美術品として価値のある刀剣類」を登録の対象と定めており、その文言上、外国刀剣を除外していないものの、銃砲刀剣類登録規則(以下、「規則」という。)4条2項は登録対象を「日本刀」に限定している。そこで、Xは、規則4条2項は、銃刀法の委任の範囲を超えており、違法であると主張すべきである。

2. 委任を受けた行政機関は、法律の委任の趣旨に従って命令を制定しなければならず、委任の趣旨をどのように具体化するのかについては行政機関に裁量が認められるものの、委任命令の内容が法律の委任の趣旨を逸脱・濫用している場合には、法律の優位の原則に反するため、当該命令は違法となる。また、委任命令の内容が委任の趣旨を踏まえて判断することになり、委任の趣旨を解釈する際には、当該法律の委任規定の文言だけでなく、当該法律の趣旨・目的、当該法律が命令に委任した趣旨等を考慮する。

3. 登録を受けない限り刀剣類の所持は禁止されており(銃刀法3条6号)、当該登録は都道府県の教育委員会が行うところ(銃刀法14条1項)、登録の申請手続については、規則に委任されている(銃刀法14条2項)。また、登録は、登録審査員の鑑定に基づき(銃刀法14条3項)、登録の方法や鑑定の基準等に関し必要な細目は規則に委任されている(銃刀法14条5項)。
 「美術品として価値のある刀剣類」を登録の対象とした趣旨は、刀剣類には美術品として文化財的価値を有するものがあるから、このような刀剣類について登録の途を開くことによって所持を許し、文化財として保存活用を図ることは、文化財保護の観点からみて有益であり、また、このような美術品として文化財的価値を有する刀剣類に限って所持を許しても危害の予防上重大な支障が生ずるものではないからである。そして、この趣旨は、日本刀、外国刀剣を区別しないで美術品として価値のある刀剣類一般に妥当する。そうだとすると、法の段階では、外国刀剣にも美術品として価値のあるものがあることを認めていることになるから、銃刀法14条5項の委任に基づいて規則を定める場合にも、日本刀・外国刀剣の両者について、同項所定の事項を定めることこそ法の要請するところというべきであり、規則において外国刀剣を登録の対象から除外することを法が期待し、容認しているとは考えられない。
 また、銃刀法が規則に委任した趣旨は、どのような刀剣類を我が国において文化財的価値を有するものとして登録の対象とするのが相当であるかの判断には、専門技術的な検討を必要とすることから、登録に際しては、専門的知識経験を有する登録審査委員の鑑定に基づくことを要するものとするとともに、その鑑定の基準を設定すること自体も専門技術的な領域に属するものとしてこれを規則に委任したものというべきである。したがって、規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められる。もっとも、鑑定の基準を定めるということと、登録の対象範囲を定めるということは、そもそも別の概念であって、鑑定基準を定めることのなかに、登録の対象範囲を定めることが当然に含まれるという解釈は、法文の用語の通常の解釈に反するため、このような解釈をするような裁量までは認められない。
 したがって、委任の趣旨は、銃刀法14条1項によって登録の対象となる刀剣類の範囲を定めたうえで、登録の対象とされた刀剣類が、美術品としての価値があるかどうかは専門家の鑑定によることとし、その鑑定の基準は所管行政庁の規則で定める点にあると解すべきである。
 そして、規則4条2項は、鑑定の基準のみならず、登録の対象となる刀剣類の範囲をも「日本刀」に限定しているため、委任の趣旨を逸脱・濫用している。
 よって、規則4条2項は、委任の範囲を超えており、違法である。

問2

1. Y県は、規則4条2項は、法の委任の範囲を超えておらず、適法であると主張すべきである。

2. そもそも、銃刀法は、銃砲刀剣類が人の生命身体に危害を及ぼす恐れの大きい危険なものであるため、原則として銃砲刀剣類の所持を禁止しつつ、例外的に刀剣類の文化財的価値に着目してその登録の途を開いているのである。かかる銃刀法の趣旨からすると、いかなる刀剣類が「美術品として価値を有する刀剣類」に当たるかの基準を定めるにあたっては文部科学省に広範な裁量が認められるべきである。したがって、その刀剣類が我が国において有する文化財的価値を考慮すべきという文部科学省の判断はかかる裁量を適切に行使した結果といえる。

3. そして、日本刀は、我が国独自の製作方法と様式美を持った刀剣であり、古くから我が国において美術品としての鑑賞の対象とされてきた歴史がある。このような日本刀が我が国において有する文化財的価値を考慮すると、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、銃刀法の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱・濫用するものということはできない。
 よって、規則4条2項は、法の委任の範囲を超えておらず、適法である。

以上

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