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2024年 刑事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 刑事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

3/26/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2024年 刑事訴訟法

小問1

1. まず、Yに「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法(以下略)207条1項本文、60条1項柱書)、ならびに「逃亡」するに「足りる相当な理由」(同項3号)があるから、Yの勾留の実体的要件は充足する。

2. 次に、Yについては、とくに逮捕手続を経ることなく、逃走できないようYを取り囲んで警察署まで連行させている。そうすると、本件の勾留請求どおりに裁判官が勾留状を発布することは、違法逮捕に基づく勾留請求として違法とならないか。

 204条ないし206条は、勾留請求は検察官が被疑者の身柄がある状態ですることを要求しており、身柄のない状態でする勾留は、「前3条の規定による勾留」(207条1項)にはあたらない。逮捕が違法ならばその時点で被疑者は釈放され勾留は認められないはずであって、このことは現に釈放をしなかった場合にも異ならないというべきである。また、将来における違法逮捕を抑止する必要がある。そこで、逮捕に違法がある場合、原則として勾留は認められないと考える。もっとも、勾留の理由及び必要性が認められる状況の下、軽微な違法がある場合にまで全て違法とし、被疑者を釈放すれば、被疑者の逃亡や罪証隠滅を防いだ状態で捜査を続行することが困難となる。そこで、逮捕の違法が勾留請求を違法ならしめる程度に重大とは言えない場合、すなわち、①実質的逮捕の時点で緊急逮捕(210条)の実体要件を充たし、かつ、②その後に一定時間内に通常逮捕状の請求・発付があり、➂実質的逮捕の時点から起算して制限時間内に検察官送致、勾留請求がなされていれば(203条ないし205条)、勾留請求を違法とするほどの重大な違法があるとはいえず、例外的に勾留請求は許容されると考える。

⑴前提として、Yに対し、とくに逮捕手続を経ることなく、逃走できないようにYの身体を4人で取り囲んで警察車両に乗せ警察署まで連行させる行為(以下「本件行為」)は、Yの意思を制圧し、Yの身体の自由を実質的に制約する処分であり、「強制の処分」(197条1項但書)たる「逮捕」(199条1項本文)に当たるから、適法な逮捕手続によらなければ令状主義(憲法33条、199条1項)に反し違法である。それにもかかわらず、本件では逮捕手続を経ずに身柄拘束をしているから、本件行為は違法な逮捕である。

⑵次に、①②⑶について検討する。

 ①について、本件でYは強盗罪(刑法236条)という「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」の嫌疑があったところ、司法警察職員らが逮捕した時点で、Yには緊急逮捕に十分な嫌疑が既にあった。また、本件ではYは犯行後に逃走していたことから、逮捕状を待っているのでは、身柄拘束という目的を遂げられないおそれがあり、「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」に当たるから、緊急逮捕の実体要件を充たす(①充足)。
 ②について、Yは令和4年10月14日5時12分に実質的逮捕をされているが、その後8時5分に、通常逮捕の令状の発布を受けていることから、②を充たす。
 ➂について、Yは10月14日5時12分に実質的逮捕をされてから、「48時間」以内の15日9時に検察官に「送致」されている(203条1項)。次に、検察官の勾留請求も、Yを「受け取った時から24時間以内」の同日15時にされており(205条1項)、また、検察官は同日15時に勾留請求していることから、実質的逮捕の時から「72時間を超え」ていない(同条2項)(➂充足)。
 以上から、勾留請求を違法とするほどの重大な違法があるとはいえない。

3. よって、Yに対する勾留請求につき、裁判官は請求どおり勾留状を発布できる。

小問2

1. 問(1)

⑴写真①は、「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」するものとして、伝聞証拠に当たらないか(320条1項)。
 伝聞法則の趣旨は、供述証拠は知覚・記憶・表現・叙述の過程を経て証拠となるところ、各過程には類型的に誤りが介在しやすいから、反対尋問等を通じて、内容の真実性を担保する点にある。そこで、伝聞証拠とは、㋐公判廷外供述を内容とするもののうち、㋑要証事実との関係で内容の真実性が問題となるものをいうと解する。㋑について、当事者主義の観点から、争点を考慮して立証趣旨と要証事実が異なる場合を除き、立証趣旨がそのまま要証事実となる。

⑵㋑について、検察官は、「犯行直後の犯行容疑者の状況」を立証趣旨として写真①の証拠調べを請求しているところ、本件では当該立証趣旨がそのまま要証事実となる。そして、写真①は、Wが犯行現場付近で撮った、2人組の逃走の様子が映っている写真であることから、写真①は、犯人の行動に重点を置き、人の犯行前後の状況を撮影したいわゆる現場写真である。
 そして、写真は機械的方法による事実の自動的な録取であるから、現場写真の性質は非供述証拠であり、要証事実との関係で内容の真実性が問題とならない(㋑不充足)。 よって、写真①は、伝聞証拠に当たらない。

2. 問(2)

⑴写真②は、伝聞証拠たる実況見分調書に添付されているところ、写真②が独立した伝聞証拠でなければ、当該実況見分調書と一体をなすものとして扱われる。以下では、写真②が独立した伝聞証拠であるかを、上記の要件㋐㋑に照らし判断する。

⑵ア ㋑について、検察官は、「犯行現場の状況」を立証趣旨として写真①の証拠調べを請求しているところ、本件では当該立証趣旨がそのまま要証事実となる。そして、立会人が見分すべき場所を指示するようないわゆる現場指示に当たる場合、かかる指示は見分の契機を提供しているものにすぎず、立会人の知覚した記憶を表現するものではないから、独立した供述をなしたものとはいえない。

イ 写真②は、実況見分に立ち会ったVの指示のもと犯人二人組の侵入経路と思われる場所、暴行場所等の写真が撮影されており、立会人が見分すべき場所を指示するようないわゆる現場指示に当たる。したがって、要証事実との関係で、供述内容の真実性は問題とならない(㋑不充足)。

⑶よって、写真②は、伝聞証拠に当たらない。

以上


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