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2022年 民事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/22/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東北大学法科大学院2022年 民事訴訟法

問1

甲に関するXの所有権

問2

1. 本件において、Yが下線部のように述べたことは訴訟上どのような意味を有するか。Yの発言のうち訴訟上意味を有する部分について以下2つに分けて検討する。

2. Yが「Xの」ゲーム機を持ち帰ったと発言している部分について
 まず、本件では、Xはゲーム機甲が自分の所有物であることを主張している。そして、Yはゲーム機甲が「Xの」所有物であったことを発言の冒頭で認めている。つまり、ゲーム機甲はYが持ち帰る以前にXの所有物であったことを双方が認めており、甲が訴外第三者のものではなく、Xの所有に属していたという先決的な権利関係に一致が存在する。したがって、かかる「Xの」という部分は訴訟上権利自白としての意味を有する。

3. Yの「Xが『それならあげるよ』といって甲を渡してくれた」という部分について
 この点は、Xの甲をYが持ち去ったという発言の内容と異なり、YがXから甲の贈与(民法549条)を主張するものである。これは、甲がXの所有権に属しないことを主張するものであるところ、否認と抗弁のいずれに該当するか。

 ⑴ ここで、否認とは相手方の主張と両立しない相手方が主張責任を負う事実の主張である。一方で、抗弁とは相手方の主張と両立する自己が立証責任を負う権利の発生・障害・消滅・阻止についての事実の主張である。

 ⑵ 本件では、Xの主張は甲の所有権がXに属するものである旨であるのに対し、Yの主張は贈与により甲の所有権がXに属しないというものである。したがって、主張は両立するものではなく、上記発言は訴訟上否認に該当する。

問3(1)

既判力

問3(2)

1. 既判力の客観的範囲について

 この点について、既判力を規定した114条1項は「主文に包含するもの」と記載している。また、理由中の判断に既判力を及ぼすと請求の当否を決する理由が重要な問題となるため審理の順序が固定されることになり、審理の効率性及び審理の柔軟性・弾力性が害される。
 以上のことから、既判力は口頭弁論終結時における訴訟物たる権利義務関係の存否について及ぶ。

2. 既判力が誰と誰の間に生じるか(主観的範囲)について
 そもそも、既判力が正当化されるのは手続き保障に基づく自己責任が認められる点にある。そのため、既判力は当事者(115条1項1号)について生じるのが原則である。また、紛争解決の実効性の確保の観点から、115条1項各号に列挙された者についても例外的に及ぶ。

問4

1. 下線部のZの主張を認めることができるか。

2. まず、前訴確定判決では甲の所有者がXであることが認定されている。そのため、前訴確定判決の既判力がZに対して及びかかる主張は許されないのではないか。本件では、Zは前訴の当事者ではなく、甲を前訴判決の確定後Yから譲り受けた者である。そこで、Zが「口頭弁論終結後の承継人」(115条1項3号)に該当し、前訴確定判決の既判力が及ぶかが問題となる。

 ⑴ そもそも、同号の趣旨は訴訟物の処分により訴訟結果が無駄になることを防止し、
   紛争解決の実効性を確保すること及び前主による代替的手続保障がなされていることから、当事者以外の者に既判力を及ぼすことに許容性がある点にある。
   そこで、「口頭弁論終結後の承継人」とは、紛争の主体たる地位を承継した者をいうと考える。そして、紛争の主体たる地位を承継した者に当たるかは、前主との訴訟物の権利義務関係を基礎としつつ、当該第三者との権利関係が当事者間の前訴の訴訟物たる権利義務関係から口頭弁論終結後に発展ないし派生したとみられる関係にあるかどうかによって判断する。

 ⑵ これをみるに、本件前訴の訴訟物は、甲に関するXの所有権である。そして、本件
   後訴は、甲をYから譲り受けたZとの間での甲の所有権の帰属を争う訴訟であり本件後訴は、本件前訴から派生ないし発展したものといえる。
   そのため、Zは甲の所有権の帰属という紛争の主体たる地位をYから承継しており、「口頭弁論終結後の承継人」に該当するとも思える。

3. もっとも、Zは、甲をYから購入しており、甲を即時取得(民法192条)したため、甲の所有権はZにあるとの主張をすると考えられる。そして、かかる主張は、第三者たるZの固有の攻撃方法であるところ、このような固有の攻撃方法を持つ場合には「承継人」に該当しないのではないか。

 ⑴ この点について、固有の攻撃方法を有する者でも紛争の主体たる地位自体は承継している。加えて、固有の攻撃方法を主張できるからといって、前訴確定判決で確定した権利義務自体も争えるとする理由はない。そのため、固有の攻撃方法を有する者も「承継人」に該当する。

 ⑵ したがって、Zは「承継人」に当たる。

4. しかし、Zは本件前訴の口頭弁論終結時までの事情について争うことができないだけであり、本件前訴の既判力と本件前訴後に甲を即時取得したという事実は矛盾するものではない。そのため、Zの上記主張は、Zの下線部の主張を認めることができる。

以上

 

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