5/11/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
明治大学法科大学院2025年 民法
問題1
小問⑴
1. Aの立場からは、以下の理由から、法定地上権の成立が認められると主張する。
2. 法定地上権(388条前段)が成立するためには、①土地及び建物の存在、②同一人所有、③その後、「その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った」ことが必要である。
3. 本問において、Bは甲土地及び乙建物に本件抵当権を設定している(①)。また、当時はどちらもA所有であった(②)。そしてBが本件抵当権を実行したことで、Cが甲土地を競落しているから建物はA所有だが、土地がC所有となり、「その実行により所有者を異にするに至った」といえる。
4. よって、法定地上権が成立する。
小問⑵
1. Cの請求は、甲土地の所有権(206条)に基づく返還請求としての建物収去土地明渡請求である。Cは、甲土地を競落してその所有権を取得している。また、Bは甲土地上に丙建物を所有して、甲土地を占有している。もっとも、Bの甲土地の占有が権限に基づくものであれば、Cの請求は認められない。そこで、法定地上権の成否が問題となる。
2. ⑴確かに、形式的には条文上の要件を充足していると言いうる。
もっとも、抵当権者の合理的意思は土地の更地としての価値を把握するというものである。また、法定地上権の成立を認めると抵当権者の意思を不当に害する上、設定者が執行を免れるためにすることを容易に許すこととなりかねない 。そこで、新建物にも同順位の抵当権の設定を受けた等特段の事情がない限り、法定地上権は成立しないと解する。
⑵本件では、甲土地及び乙建物に共同抵当が設定され、建て替え後の丙建物には抵当権が設定されていない。
⑶したがって、法定地上権は成立しない。
3. よって、Cの請求は認められない。
小問⑶
1. CのAに対する丙建物の収去と甲土地の明渡し請求は認められるか。小問⑵と同様に法定地上権の成否が問題となる。
2. 小問⑴の通り388条前段の要件を形式的に満たす。また、抵当権者の合理的意思は、底地としての担保価値のみを把握するというものだから、法定地上権の成立を認めても当権者が不当に害されることはない。よって法定地上権が成立すると解する。
3. したがって、CのAに対する請求は認められない。
問題2
小問⑴
1. BはXまたはYへの支払請求を拒絶できるか。
2. 債権が二重譲渡された場合には、通知が対抗要件となるが、それは債務者による譲渡の認識を通じて債権譲渡を公示する点にある。本問では、債権の二重譲渡の事案ではなく差押命令と債権譲渡の事例であるが、債務者に公示することが必要な点で同じであるから、債権の二重譲渡と同様に考えるべきである。
債権の二重譲渡がなされ、両譲受人が確定日付ある通知(467条2項)を備えた場合には、通知が債務者に到達した日時の先後をもって優劣を決定する。もっとも、本問においてXの差押命令とYへの債権譲渡通知が同時にBに到着しているから、その処理が問題となる。
差押命令権者も譲受人もなすべきことをなしているし、債務者はもともと債務を負っていたのだから、これを免れるべき理由はない。一方、債務者が二重に弁済を強制されるいわれもない。そこで、通知が同時に到達した場合には、差押命令権者も譲受人も債権全額の履行を請求でき、債務者がいずれかに弁済すれば債務は消滅すると解する。
3. よって、BはXまたはYのどちらかに弁済をすれば他方からの支払請求を拒絶することができる。一方で、いずれかに弁済するまでは、XないしYの請求を拒絶することはできない。
小問⑵
1. XまたはYは全額の供託金還付請求をなしうるか。
2. 前提として、債権差押命令の送達と債権譲渡通知の到達の先後関係が不明である場合、「弁済者が債権者を確知することができないとき」(494条2項)にあたると解されるから、Bの行った供託は適法である。
3. そして、小問⑴で検討した通り、XもYもBに対して履行請求をすることができるから、「債権者」(498条1項)にあたる。もっとも全額請求をできるかは別問題である。
確かに、民法が債権者平等の原則を採っていことから、按分額の請求を認めた方が公平とも思える。しかし、債権者が平等割合で弁済を受けられるのは法律上の手続きがとられた場合に限られる。債権回収に勤勉な者を保護する見地から、先に債権回収を行った者が優先すると考えた方がむしろ公平といえる。
そこで、債権者は全額の供託金返還を請求することができると解する。
4. よって、XまたはYは全額の供託金還付請求をすることができる。
以上