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2022年 刑法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】

4/20/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

日本大学法科大学院2022年 刑法

1. 海水中で、V1の手を離した行為につき、殺人未遂罪(199条、203条)が成立するか。

⑴ 6歳と幼く、身長120センチメートルのV1を、水深1.3メートルという身長より深い、深夜の冷たい海水中に連れて行き、手を離す行為は、V1を溺死させる危険性を有する行為といえる。本問の事実関係から、甲がV1の手を離した秒数などは不明であるが、夜の海で潮の流れに捉えられるなどして、V1が甲のもとを離れ溺死する可能性は十分高まっていたといえる。

⑵ 甲がV1を陸地に返し、結果的にV1は死亡していない。

⑶ 甲は、V1を死なせたくない気持ちから、陸地へ連れ帰している。V1に中止未遂(43条ただし書)が成立するか。

ア 「犯罪を中止」するとは、結果回避に向けた真摯な努力がされることをいう。本件では、V1が呼吸困難など放置すればそのまま死亡するほどの危険性が生じていたとはいえず、甲がV1を連れて防波堤に上がった時点で「犯罪を中止」したといえる。

イ 「自己の意思により」とは、実行しようと思えばできたのに自らの意思で止めた場合をいう。甲は、V1が「パパ」などと呼ぶ声を聞き、憐憫の情からV1を死なせないことを決意している。そのため、甲は自らの意思で犯罪の実行を止めたといえるため、、「自己の意思により」といえる。

ウ よって、中止未遂が成立する。

⑷ 故意とは、構成要件的結果が発生することの認識認容をいう。甲は無理心中を図るために、V1の足がつかないことを確認してから手を放しているため、行為によってV1が死亡することを認識認容していたといえる。そのため、殺人罪の故意は認められる。

⑸ 以上、V1に対する殺人未遂罪が成立し、43条但書により刑が必要的に減免される。

2. 海水中で、V2を沈めた行為につき、殺人未遂罪が成立するか。

⑴ 生後2ヶ月と生まれて間もないV2の全身を、深夜の冷たい海に沈めることは、V2を溺死させる危険性の高い行為といえ、殺人の実行行為にあたる。

⑵ 甲は、V2を死なせたくない気持ちから、陸地へ連れ帰すなどしている。V1に中止未遂(43条ただし書)が成立するか。

ア 中止犯の減免根拠は中止行為を行ったことに対する責任減少にある。そのため、中止行為は犯人単独で行う必要はないが、犯人自身が防止に当たったのと同視できるだけの努力が必要である。
 本件では、V2は意識も失い、呼吸も止まるに至っている。そこで、甲は、V2に海水を吐かせるため救命措置を講じた。さらにV1に助けを呼ばせ、駆けつけたAの手際がよかったことから、救命措置を任せ、Bが救急車の電話を呼んでいることも認識した上で、救急車が到着するまでAの質問に答えるなどしていた。甲はAの手際の良さを見て救命措置を任せていることから、犯人である甲自身が防止に当たったのと同視できるだけの努力があったといえる。したがって、甲はV2の救命のための真摯な努力を尽くしたといえる。

イ 甲は、V2の泣き声を聞き、憐憫の情からV2を死なせないことを決意したのであり、中止の意思が認められる。

ウ よって、中止未遂が成立する。

⑶ 甲はV2が死亡することを認識認容していたといえ、故意も認められる。

⑷ 以上、V2に対する殺人未遂罪が成立し、43条但書により刑が必要的に減免される。

以上

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