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2023年 憲法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 憲法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/22/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2023年 憲法

第1 設問1

1. 死刑自体の合憲性

⑴ 本件法改正では、覚醒剤や麻薬等の薬物の輸入を行なったものは死刑し処す旨が定められることになるが、そもそも死刑制度は憲法13条、31条、36条に反し、違憲とならないか。

⑵ 憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重され」、「生命」「に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を規定している。そのため、犯罪を犯し、公共の福祉という基本原則に反する場合には、生命に対する国民の権利といっても立法上制限ないし剥奪されることを同条は想定しているといえる。

 憲法31条は生命に対する国民の権利といっても法律の定める適切な手続きによって刑罰が科されることを定めている。すなわち、憲法は死刑を想定し、かつこれを是認したものと解すべきである。また、死刑の威嚇力によって一般予防を成したものであり、死刑制度の必要性を承認したものと解することができる。

 憲法36条は「残虐な刑罰」を禁じている。死刑は確かに究極の刑罰であるが、刑罰としての死刑そのものが、直ちに「残虐な刑罰」にあたるとは言えない。

⑶ よって、死刑制度自体は合憲である。

2. 本件法改正の合憲性

⑴ では、本件法改正で死刑を定めたことについて、罪刑均衡を失していないかが問題となる。

ア 死刑は最も重い刑罰であり、罪刑均衡の原則が存在するため、どんな罪に対しても死刑を科すことは許されない。

イ 違法薬物の輸入という犯罪は確かに重大な犯罪ではあるが、害する法益は社会的法益ではなく、人の生命身体等を害するものではない。そのため、個人の生命の権利を害する死刑は重すぎるといえ、罪刑の均衡を失っているといえる。

ウ よって、本件法改正は罪刑均衡の原則に反する。

⑵ では、かかる原則に反することは憲法上問題となるのか。

ア 罪刑均衡の原則は罪刑法定主義の派生原理であり、罪刑法定主義は憲法31条によって求められていると解することができる。そのため、罪刑均衡の原則も同条により要求されていると解する。

イ よって、同原則に反している本件法改正は憲法31条に反し、違憲である。

第2 設問2

1. B町が葬儀委員会へ補助金を交付した行為及び公民館使用料を免除した行為(以下これらを合わせて「本件行為」という)は、「宗教的活動」(憲法20条3項)に該当し、違憲にならないか。また、本件行為は公金を宗教上の組織に支出するもの及び公の財産を宗教上の団体の利用に供するものとして憲法89条前段に違反しないか。

2. 「宗教的活動」該当性

⑴ 政教分離とは国家の宗教的中立性を保つために、国家と宗教を分離することを指す。憲法は政教分離規定を設けるに当たり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものである。その法的性格はいわゆる制度的保障であり、政教分離規定を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。そのため、政教分離の程度は厳格なものが要求され、国家と宗教の分離が原則であり、関わり合いが認められるのが例外であるにすぎないとも思われる。

 しかし、完全な分離を実現することは実際上不可能に近い。そこで、政教分離原則は、国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み、そのかかわり合いが社会的文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものであると解する。

 そうすると、20条3項にいう「宗教的活動」とは国家と宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、具体的にはその行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、鑑賞等になるような行為をいうと解すべきである。そして、その判断期当たっては、当該行為が行われる場所、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的及び宗教的意識の有無・程度、行為が一般人に与える影響等を考慮する。

⑵ これをみるに、町民葬は、町の発展に数多くの功績を残した人に対し、それを報いるため葬儀委員会が結成され、町全体で故人及び遺族を慰めるために行う性格である。このような町民葬は慣習化してきたもので町の宗教活動としての認識は弱い。そして、葬儀は特定の宗教の儀式で行われ、宗教的色彩を帯びる部分もあるが、これは遺族の意向によるもので、葬儀委員会が特定の宗教の援助を目的とするものではない。

⑶ 本件では、Aは最長の在職期間の間町長として活躍し、たくさんの功績を残した。そのため、それを報いるために葬儀委員会が結成された。葬儀は仏式で行われたが、これは遺族の意向によるもので、B町が葬儀委員会に補助金を支出したり、公民館使用料を免除したりしても、その目的は宗教的意義はなく、かつその効果は仏教を援助する効果はない。

⑷ よって、本件行為は「宗教的活動」には当たらない。

⑸ したがって、憲法20条3項に反しない。

3. 「宗教上の組織若しくは団体」(憲法89条前段)該当性

⑴ 葬儀委員会は「宗教上の組織若しくは団体」に該当するか。

⑵ 「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教と何らかの関わり合いのある行為を行なっている組織ないし団体の全てを意味するものではなく、特定の宗教の信仰、礼拝または普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指すものと解すべきである。

⑶ 本件において、葬儀委員会は町の機関には属せず、あくまで私的、独立の存在であった。そして本件葬儀委員会は、Aの葬儀を 全町的な意義・目的で行うために結成されたものであり、継続性のある団体ではなく、仏教その他の特定の宗教の方式による葬儀 の執行を目的としたものでもない。本件町民葬は仏式で行われたのは、遺族の意向を受けて採用されたからであり、本件葬儀委員会が求めたわけではない。そして、葬儀自体も前述の通り、それ自体に宗教性はなかった。

 以上より、本件葬儀委員会は仏教その他の特定の宗教の信仰、礼拝または普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組 織ないし団体には該当しないため、「宗教上の組織若しくは団体」には該当しない。

⑷ よって、憲法89条前段には反しない。

4. したがって、本件行為は合憲である。

以上

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