10/26/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
北海道大学法科大学院2022年 商法
問1
1. B・Cは、Aに対する監視義務を負い、かかる義務の違反を任務懈怠として423条(会社法(以下、略))の責任を負うか。
⑴ 取締役は、会社の業務執行を監督すべき権限を有する取締役会(362条2項2号)の構成員である以上、他の取締役の業務執行につき監視義務を負う。そして、かかる監視義務が取締役会まで上程されていない事項まで及ぶかが問題となるところ、取締役会は、会議体であるから、業務執行の監督を十全に行うためには、普段から構成員たる取締役が監視の任務を果たすことが重要である。また、各取締役は、取締役会を自ら招集するか、招集することを求めることができる(366条)。よって、各取締役は、取締役会に上程されていないことについても監視義務を負い、かかる義務に違反した場合には、任務懈怠として423条の責任を負うと考える。
⑵ 本件において、確かに、B・Cは、Aが362条4項2号に反して多額の融資を受けていたというAの不当な行為につき知らなかったといえる。しかし、甲社では実際に取締役会が開催されておらず、Aが単独で業務執行を行っていたため、BCは取締役として普段から果たすべき職責を果たしていなかったといえる。したがって、Aの不当な行為についてその疑いを生ぜしめる事情を知らなかったとしても、BCにはAの不当な行為について監視義務違反が認められる。
2. 以上より、B・Cの監視義務違反は問題となる。
問2前段
1. 式会社においては、原則として、株主がその株式を他人に譲渡できる(127条)。
まず、株式会社では、株式は引受価額の限度でのみ責任を負うという有限責任(104条)とされており、会社債権者保護の見地から資本の充実・維持が要請されるため、原則として株主は会社から出資の払戻しを受けることはできない(606条参照)。
2. そのため、株主の投下資本の主たる回収方法は剰余金の配当と株式の譲渡によることになるところ、株主が経営者でない場合は、経営手腕を用いて投下資本に対する危険回避ができないため、株式の譲渡が制限される可能性があるとすると投下資本の回収が困難になり出資を躊躇して資本の結集が測れなくなってしまう。
3. そこで、株主貸本回収の機会を保障するために、株式譲渡自由の原則が認められている。
問2後段
1. 譲渡による株式の取得には、当該株式会社の承認を要件とする旨を定款で定めることができる(2条17号、107条1項1号・同2項1号、108条1項4号・同2項4号、136条以下)。
2. これは、会社にはごく少数の株主で会社を運営する同族会社のような会社も存在するところ、このような会社では、会社を円滑に運営するために株主間の連携が重要となり個々の株主の個性が問題視されることから、このような会社のニーズに応えて、会社経営上好ましくない者の参加を排除することを可能にし、会社経営の安定化を図るために設けられたものである。
以上