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2022年 憲法 愛知大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 憲法 愛知大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

愛知大学法科大学院2022年 商法

1.  本件において刑務所長の刑事収容施設法70条に基づくAに対する本件閲覧禁止処分が憲法21条1項により保障されるAの本件雑誌を閲覧する自由(以下本件自由とする。)を侵害し違憲ではないかという憲法上の論点があると考えられる。そこで本件閲覧禁止処分が違憲となるかにつき以下論じる。

⑴ まず、憲法21条1項は文言上一切の表現の自由を保障している。そして、現代社会において国民は情報を受け取ることによりその情報を基に表現をすることができる。そのため、表現をするためには一定の情報を知ることが不可欠といえ表現の自由として知る自由も21条1項により保障されると解する。本件自由も雑誌の閲読を通してその雑誌に表現された情報を知り人格を形成発展させその後の表現につながるものであるから知る自由としての性質を有し21条1項により保障されると解する。

⑵ そして本件閲覧禁止処分はAの本件雑誌の閲覧を禁止している以上本件自由を制約しているといえる。

⑶ もっとも本件自由も決して無制約なものではなく公共の福祉による一定の制約を受ける。そこで本件閲覧禁止処分は公共の福祉の範囲内による制約として正当化されないか。正当化の審査基準が問題となる。

ア 表現の自由は、個人の人格形成を発展させる点と民主主義社会において意思決定に資する点において非常に重要な権利である。そして閲読の自由もさまざまな意見、知識、情報に接する機会を保障するものでありその者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものとして重要な権利である。
 制約の態様はAの改善更生及び円滑な社会復帰を目的としたものであり、その制約の付随的なものとして本件自由を付随的に制約するに過ぎないとも思える。しかし、かかる制約によりAが本件雑誌に記載された情報を接取する手段が失われる。そのためかかる制約が付随的なものだとしても雑誌に記された情報を知るという本件自由の本質部分を大きく制約するといえ、制約の態様は強度なものといえる。これらを考慮すれば、制約の正当化は厳格に判断すべきとも思える。しかしながら、Aは刑務所に収容されている身分であるところ、刑務所は逃亡防止や収容されている者の改善更生等の刑事司法目的達成のために一定の秩序が保たれなければならない場所であるため、その一定の秩序を保つために制約を受けることはやむをえないといえる。また、本件処分は刑務所の秩序維持等の任務を任された刑務所長によるものであり、その処分を下すにあたっては広い裁量が認められている。
 そのため、本件閲覧禁止処分による制約は、目的が重要で手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合に正当化されると解する。

イ 本件についてみると、本件閲覧禁止処分の目的はAの改善更生及び円滑な社会復帰の妨げとなるおそれが生じることを防止することである。刑務所という場所の目的は前述の通りであり、刑事犯を更生させ我が国の治安維持を達成するために必要な施設といえる。そして刑事罰を犯したAを更生させることは正に刑務所の目的と一致するものであり、     我が国の治安維持に資するものといえ重要な目的といえる。
 次に手段は本件雑誌の閲覧そのものを禁止するものである。確かに本件雑誌の内容がAの事件を美化するものであるが、犯罪事件を美化するものが直ちに犯罪者の改善更生及び円滑な社会復帰の妨げになるとはいえない。
 しかし、Aが起こした犯罪はストーカー殺人という極めて悪質なものであり、またストーカーという犯罪は行為者が思い込みの激しい性格である傾向にありやすいため自分が起こした事件が美化されているものだと知れば、自分が実は悪質な行為をしてはいないのではないかという思い込みにつながり改善更生及び円滑な社会復帰が妨げられるおそれがある。そのため本件閲覧禁止処分をする必要性は目的との関係であるといえる。また、本件雑誌の閲覧を禁止すればAへのAの事件を美化する情報を断ち前記おそれが生じることが防げるため手段の目的に対する適合性も認められる。さらに、目的達成のためには手段本件雑誌のAに関する記事のみの閲覧を禁止すればよいとも思えるが、雑誌の一部分にしかAのことが書かれていない可能性等があり、雑誌の記事全てを確認していては刑務所の迅速な職務遂行性も損なわれてしまうから本件雑誌の閲覧の禁止は相当性があるといえる範囲内の手段である。
 また、本件雑誌はAが自費で購入したものであり、その閲覧の禁止はAの財産権を制約するという側面もあるが、刑務所の治安や目的を達成できない物を購入することは公共の福祉のために制約されてもやむを得ないものであるからこの点からも相当な手段といえる。これらを踏まえると本件閲覧禁止処分の手段は目的との関係で実質的関連性があるといえる。

ウ したがって本件閲覧禁止処分による本件自由への制約は公共の福祉の範囲内のものといえ正当化される。

⑷ 以上より、本件閲覧禁止処分は合憲となる。

以上

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