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2024年 憲法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/2/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

日本大学法科大学院2024年 憲法

1. 国家公務員法102条1項(以下「本件規定」)は、公務員の政治活動の自由(以下「本件自由」という。)を侵害し違憲ではないか。

⑴政治活動は、国民の政治的意思決定に必要な情報を伝達するものであるから、憲法21条1項により保障される。

⑵また、本件規定により、公務員による政治活動が禁止されているため、本件自由は制約されている。

⑶ここで、公務員も「国民」(第3章)であるから、当然人権の享有主体であるが、憲法が公務員関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めている(憲法15条、73条4号等)ことから、一定の制約を受ける。 すなわち、政治活動の自由は、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であるが、政党内閣制の下においては、行政の職務の中立性が保たれてはじめて政策が忠実に実行されて、行政の継続性、安定性が維持される以上、事の性質上一定の制約を受ける。
 次に、規制態様についてみるに、本件制約は政治的内容を含む表現そのものを禁止する表現内容規制であり、表現内容規制は恣意的運用により思想の自由市場が歪められるおそれがあるから規制態様が強い。しかし、本件規定は表現の規制を直接目的とする規制ではなく、その表現がもたらす弊害の防止を目的とするという意味で間接的、付随的制約に過ぎない(猿払事件)。
 そこで、中間審査基準によるべきであり、目的が重要で、目的と手段との間に実質的関連性がある場合に、本件規定は合憲と考える。

⑷まず、本件規定の目的は、行政の中立的運営の確保にあり、行政の中立的運営を確保しなければ、忠実に施策が遂行されず、福祉主義(25条以下)の要請を全うできなくなるから、かかる目的は憲法上の要請に適うものといえ、重要である。
 そして、目的達成のための手段として、「政治的行為」が禁止されているところ、政治活動の自由が民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることからすれば、「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものをいうと解される。そして、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは、当該公務員につき、指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無、職務の内容や権限における裁量の有無、当該行為につき、勤務時間の内外、国ないし職場の施設の利用の有無、公務員の地位の利用の有無、公務員により組織される団体の活動としての性格の有無、公務員による行為と直接認識され得る態様の有無、行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される(世田谷事件)。
 次に、公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為を禁止しなければ、行政の中立的運営を確保できないから、本件規定は目的に適合する。
 また、禁止の対象とされるのは公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られるのであり、このようなおそれが認められない政治的行為は禁止されない。
 例えば、Aについては、係長という一つの係を統括する地位にあるものの、課長や部長と言ったより管理職的な地位にあったわけではなく、勤務時間外である日曜日に自らの名前や職業を名乗ることなく、平穏な態様で行っていたのであり、公務員による行為と直接認識される態様ではないことから、Aの行為は本件規定に該当しないのである。
 このように、本件規定は必要な限度の規制にとどまっているといえ、手段の必要性・相当性も認められる。
 よって、目的と手段との間に実質的関連性が認められる。

2. 以上より、本件規定は、21条1項に反さず合憲である。

以上

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