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2022年 民事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/30/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

明治大学法科大学院2022年 民事訴訟法

 

問1

1. 自己利用文書(民事訴訟法(以下、法令名省略。)220条4号二)については、民事訴訟法が文書提出義務を一般化し、当事者の実質的対等を図った趣旨から、その該当性は、該当性は限定して解釈すべきである。
 そこで、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」とは、①専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていないこと(内部利用目的・外部非開示性)に加えて、②開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められること(実質的不利益性)、③当該文書の提出が命じられても自由な意思形成が害されるおそれがない等の特段の事情のないことの3つの要件を満たした文書のことを指すと考える。

2. これを金融機関の貸出稟議書を例にすると、以下のように説明することができる。

⑴ まず、貸出稟議書は、金融機関において融資の決裁に際して作成される稟議書であるところ、稟議書は専ら内部の意思形成における過程をなすものであり、外部にこれを公表する予定のあるものではないから内部利用目的・外部非開示性が認められる(①)。

⑵ 次に、貸出稟議書には融資の相手方についての評価や意見が記載されるものであることから、かかる文書が開示されると当該金融機関の取引相手からの信頼を失うことが想定される。この点に着目すれば、実質的不利益性も認められる(➁)。

⑶ また、貸出稟議書が公開されるとすれば、金融機関は裁判手続きによって貸出稟議書が公開されることを念頭にこれを作成しなければならなくなり、金融機関の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるといえる。したがって、自由な意思形成が害されるおそれがないとはいえず、特段の事情がないといえる(③)。

⑷ 以上より、貸出稟議書は自己利用文書(220条4号二)に該当する。

問2

1. Yが控訴しなかった場合

 Xは控訴をして請求を拡張することができるか。
 控訴をするには控訴の利益が必要である。処分権主義(246条)の下、自らの責任で審判対象を設定し全部勝訴した者に、上訴による不服申立てを認める必要はなく自己責任を問いうる。
 そこで、控訴の利益は申立てと判決とを比較し、質的・量的に前者が後者より大きい場合に認められると考える。したがって、原則として、原審で全部勝訴判決を受けた当事者は原則控訴の利益を有しない。
 本件では、Xは第1審判決で全部認容判決を受けている。また、予備的相殺や一部請求、後遺症損害等の自己責任を問いえない特段の事情も存在しない。したがって、申立てと判決とを比較し、質的・量的に前者が後者より大きいとはいえず、かかる場合にXに控訴の利益はない。

2. Yが控訴した場合

 Yが控訴した場合には、附帯控訴により請求を拡張することが考えられるも、上記のとおり、Xは控訴の利益を有していないのであるから、附帯控訴するのに控訴の利益が必要となるかが問題となる。
 これについて、附帯控訴は公訴権消失後であっても主張することができる(293条1項)。そして、附帯控訴は、控訴人は請求の範囲内で不服申立ての範囲を拡張することができるのに、被控訴人がそれをなし得ないのは当事者間の公平を害するとして、当事者間の公平を図ろうとする点に制度趣旨がある。
 そうであるならば、附帯控訴は控訴の一種としてではなく、控訴審における特殊の攻撃防御方法であると解するのが適当である。
 したがって、附帯控訴をするに際して控訴の利益は不要であり、Xは附帯控訴によって請求を400万円に拡張することができる。

以上

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