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2021年 民事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 民事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/22/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東北大学法科大学院2021年 民事訴訟法 

設問1

 114条1項における「主文に包含するもの」とは、訴訟物たる権利の存否に関する判断を意味する。
 なぜならば、同条は既判力の客観的範囲を定めたものであるところ、判決理由中の判断に既判力が生じるとすれば、当事者は理由中の判断に関する事項についても攻撃防御を尽くさなければならなくなり、審理の簡易性・弾力性が損なわれるからである。

設問2

 既判力とは、確定判決の内容たる判断に生ずる後訴裁判所に対する拘束力をいう。後訴裁判所は、既判力の生じた判断を判決の基礎としなければならず(積極的作用)、既判力の生じた判断に矛盾する主張・証拠の申出は遮断しなければならない(消極的作用)。
 そして、既判力は当事者にのみ生じるのが原則であるところ、前訴確定判決に係る訴訟(以下「本件前訴」とする)の当事者はXとYであるため、XとYに前訴確定判決の既判力が生じる。
 また、前述のように、既判力は、「主文に包含するもの」すなわち訴訟物たる権利の存否判断に生じる。本件前訴の訴訟物はXの甲土地に対する所有権であり、前訴確定判決はXの請求を認容しているため、同判決の既判力は本件前訴の口頭弁論終結時におけるXの甲土地に対する所有権の存在に生じる。
 本件においては、本件訴訟の訴訟物は、所有権に基づく返還請求権としての甲土地明渡請求権であり、本件前訴訴訟物とは異なる。もっとも、同訴訟においてXは、同請求権の発生原因事実として、①甲土地の所有者はXであること、②現在Yが甲土地を占有していることを主張する。このとき、①の主張内容については前訴確定判決の既判力が及んでいるのであるから、本件前訴と本件訴訟の訴訟物は先決関係にあると言える。
 そうすると、本件訴訟において、裁判所は、Yが所有権喪失の抗弁を主張していない以上、上記①の主張につき新しく審理をする必要がなく、前訴確定判決を前提として判断しなければならない。また、上記②の主張内容については、Yによる自白が成立している(179条)。
 よって、本件訴訟につき、裁判所は、証拠調べを経ずに請求認容判決をすることができる。

設問3

 既判力の意義及び範囲は前記の通りである。前訴確定判決に係る訴訟(以下「本件前訴」とする)の当事者はXとYであるため、XとYに前訴確定判決の既判力が生じる。
 本件前訴の訴訟物はYのXに対する売買契約に基づく代金支払請求権であり、前訴確定判決はYの請求を認容しているため、同判決の既判力は本件前訴の口頭弁論終結時における当該請求権の存在に生じる。
 なお、前訴確定判決は引換給付判決であるため、反対債権である売買目的物の引渡請求権が判決主文に記載されているものの、引換給付部分は執行開始要件(民事執行法31条1項)を示すものに過ぎず、同請求権は訴訟物を構成しないため、前訴確定判決の既判力は同請求権の存在には生じない。
 本件訴訟の訴訟物はXのYに対する売買契約に基づく目的物引渡請求権であるため、本件前訴訴訟物とは異なる。また、両請求権は先決関係にも矛盾関係にもない。
 よって、前訴確定判決の既判力は、本件訴訟において作用しない。

以上

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