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2025年 民法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 民法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

3/26/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2025年 民法

第1問

1. BはCに対して、所有権(民法(以下略)206条)に基づく返還請求として、甲の引渡しを請求すると考えられるところ、これは認められるか。

⑴かかる請求が認められるためには、自己所有及び相手方占有が必要であるところ、Bは2024年9月1日に所有者Aから甲を買い受けている(555条)。さらに、CはAから占有改定によって甲の引渡しを受けている(183条)。そのため、上記請求は認められるとも思える。

⑵これに対してCは、①Cは甲の「引渡し」(178条)を受けているため、BはCに甲の取得を「対抗」できない、②甲を即時取得(192条)した結果、Bは甲の所有権を喪失するとして、かかる請求は認められないと反論すると考えられる。

ア ①について

 まず、占有改定による引渡しも178条の「引渡し」に含まれるところ、。BCはいずれも、占有改定によって甲の「引渡し」を受けている。しかし、Bへの引渡しは2024年9月1日でありCへの引渡し(同年10月1日)より前であるため、BはCに甲の取得を「対抗」でき、①の反論は認められない。

イ ②について

(ア)まず、AとCとの売買契約は「取引行為」(192条)にあたり、Cは「動産」甲の引渡しを受けている。

(イ)では、Cは占有改定により甲の引渡しを受けているところ、これは「占有を始めた」にあたるか。その判断基準が問題となる。
そもそも、192条が「占有を始めた」ことを要求した趣旨は、真の権利者の犠牲の下に動産譲受人を保護する以上、権利保護要件を要求して公平を図る点にある。かかる趣旨に鑑み、「占有」とは、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせる占有をいうと考える。
 そのため、占有改定は、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせる占有とは言えない。もっとも、Cは2024年10月1日にAから甲の現実の引渡しを受けている(182条1項)。これは、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせる占有と言えるから、かかる時点においてCは甲の「占有を始めた」と言える。

ウ 次に、占有者Cは、「所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定」(186条1項)され、無過失も推定される(188条)。
 もっとも、即時取得は、前主に所有権があることを信頼して動産の占有を取得した者を保護する規定であるから、善意の基準時は占有開始時と解されるところ、現実の引渡し時に、CはAが無権利者であることにつき悪意であった。そのため、善意についての上記推定は覆される。

エ したがって、Cは甲を即時取得できず、②の反論は認められない。

2. よって、Bの上記請求は認められる。

第2問

1. CはAに対して、所有権に基づく返還請求として、甲土地の明渡しを請求すると考えられるところ、これは認められるか。
 かかる請求が認められるためには、自己所有及び相手方占有が必要である。まずAは甲土地を占有している。次に、返済期日(2024年10月1日)までにAが本件借入金債務を履行していなかったため、かかる時点でBは甲土地の所有権を確定的に有していた。そのため、その後譲渡担保権者Bから甲土地を買い受けたCは、甲土地の所有権を有している。したがって、上記請求は認められそうである。

⑴ これに対してAは、本件譲渡担保契約における受戻権を行使して、甲の所有権を完全に回復する結果、Cは所有権を喪失するとして、上記請求は認められないと反論すると考えられる。

ア そもそも、債務者は、弁済期の経過後であっても、債権者が担保権の実行を完了するまでの間は、受戻権を有する。具体的には、本件のように帰属清算型の場合、債権者が債務者に対し、清算金の支払又は清算金が生じないことの通知をするまでの間、債務者は受戻権を有する。

イ 本件において、甲土地の適正評価額が3000万円で、本件借入金債務が2000万円であったことから、BがAに対して返済期日以降、1000万円の清算金を支払う必要があったものの、これをしていない。そして、Aは2024年10月20日、本件借入金債務の弁済として、2000万円の提供(493条本文)をしたもののBが受領を拒絶したため、これをBのために供託している(494条1項1号)。そのため、受戻権の行使があったとして、上記反論は認められそうである。

⑵もっとも、譲渡担保権者Bが第三者Cに甲土地を処分していることから、受戻権は消滅しないか。帰属清算型譲渡担保において、弁済期以後清算前に譲渡担保権者が目的物を第三者に処分した場合、譲渡担保権者の受戻権が消滅するかが問題となる。

ア そもそも、 不動産譲渡担保において、 弁済期の徒過によって帰属清算、 処分清算を問わず譲渡担保権者は目的物を処分する権能を取得するから、譲渡担保権者がこの権能に基づいて目的物を譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、受戻権は消滅する。そして、これは、権利関係の早期安定の観点と、譲受人が背信的悪意者に当たるかどうか確知しうる立場にあるとは限らない譲渡担保権者の不利益回避の観点から、譲渡を受けた第三者が背信的悪意者に当たる場合であっても異なるところはない。

イ 本件ではBがCに甲土地を処分した時点で、Aの受戻権は消滅しており、上記反論は認められない。これは、Cが、専ら、Aが本件借入金債務を履行して甲土地を取り戻すことを妨げるとともに、AがBからの清算金を取得することを事実上不可能にすることを意図していた背信的悪意者であっても変わらない。

2. よって、Cの上記請求は認められる。

以上



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