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2022年 刑法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/22/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東北大学法科大学院2022年 刑法

第1 Xの罪責

1. まず、XはV方(「人の住居」)強盗目的で立ち入っている。これは管理権者の意思に反する立ち入りであるため、「侵入」に当たる。よって、Xに住居侵入罪(刑法(以下略)130条前段)が成立する。

 ⑴ XがV宅のリビングルームの机の上に置かれていた現金5000円と本件カードの入った財布(「他人の財物」)を取り上げ、自己のズボンのポケットに入れている。上記の財物はV方にあったため、Vの占有が認められる。したがって、Xの行為は、Vの意思に反して上記の財物の占有をXに移転する行為であり、「窃取」に当たる。故意、不法領得の意思も問題なく認められる。

 ⑵ よって、窃盗罪が成立する。

2. Vを包丁で脅してキャッシュカードの暗証番号を聞き出した行為について、2項強盗罪(236条2項)が成立しないか。

 ⑴ 「暴行または脅迫」とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫をいう。本件では、Xは寝ていたVを起こし、包丁を突き付けながら暗証番号を聞き出している。ナイフという殺傷能力の高い凶器を使用し、かつVがやや体力が衰えている50歳の小柄な女性であり、Xが20代かつ標準的な男性の体型という体力が十分であることからも、Xの脅迫は反抗抑圧に足る暴行・脅迫であったといえる(①、②充足)。

 ⑵ 「財産上不法の利益」とは、処罰範囲を明確にするため、財物奪取と同視できるだけの具体的利益である必要がある。
   キャッシュカードを奪った後に暗証番号を聞けば、事実上ATMを通して当該預貯金口座から預貯金の払戻しを受け得る地位という財産上の利益を得たものというべきである。よって、財物奪取と同視できる程度の具体的利益を得ているといえ、「財産上不法の利益」を得たといえる。

 ⑶ Xには、故意、不法領得の意思も認められる。

 ⑷ よって、2項強盗罪が成立する。

第2 Yの罪責

1. XはYとの間で住居侵入罪及び窃盗罪、2項強盗罪の共謀共同正犯とならないか。

 ⑴ 共同正犯の処罰根拠は法益侵害の共同惹起にある。そのため、自手実行を伴っていなくても、①共謀、②共謀に基づく実行行為、③正犯性、が認められれば、法益侵害を共同惹起したといえるため、共謀共同正犯として処罰できる。

 ⑵

  ア 本件では、V方に忍びこみ、Vを包丁で脅して現金を奪うという計画を立てている。そのため、住居侵入罪と1項強盗罪の実行行為を行うことについて意思連絡があったといえる(①)。

  イ Xは窃盗罪と2項強盗罪の実行行為を行っている。そのため、上記行為が共謀に基づく実行行為に当たるかが問題となる。

  (ア) 共謀に基づく実行行為とは、共謀の因果性が実行行為に及んでいる場合に認められ、因果性が及んでいるか否かは共謀の危険実現の範囲内の実行行為であるか否かによって判断するべきである。共謀の因果性が実行行為に及んでいるかどうかは当初の共謀と実行行為の内容との共通性、共謀による行為との関連性、犯意の単一性・継続性、動機・目的の共通性等を総合的に考慮して判断する。

  (イ) 本件において、窃盗と1項強盗は奪取罪という点で行為態様が共通していること、2項強盗と1項強盗は強取する対象が異なるのみであること、同一機会であること、生活費を得るために実行行為を行うという動機が共通していることなどを鑑みると、1項強盗の共謀の因果性が本件における窃盗及び2項強盗の実行行為に及んでいるといえる。

  (ウ) よって、共謀に基づく実行行為といえる。

  ウ 正犯性は意思連絡の強さを前提に、人的関係、果たした役割の重要性、動機の積極性、利益の帰属などの諸要素を考慮して総合的に判断する。XとYは夫婦であり、ともにAを解雇され、生活費に困っていたため、動機もX Yは共通しており、利益の帰属もX Yの共有となる予定であった。そして、Yの役割は見張り役である。たしかに寝ていたとはいえ、Yが見張りの役を担うという計画がなければ、Xが実行行為に移ることができなかったから、重要な役割といえる。このことから、Yの正犯性も肯定できる

2. しかし、Yは1項強盗の認識でいたにもかかわらず、実際には窃盗および2項強盗の実行行為が行われたため、故意が認められないのではないか。

 ⑴ 窃盗については、重い強盗罪の認識で軽い窃盗罪が成立している。

  ア 認識した事実と実現した事実が構成要件で重なり合う限度で規範に直面していたといえるから、重なり合いの限度で故意責任を問うことができる。重なり合いの有無については、両罪の行為態様、および被侵害法益の共通性をもって判断すべきである。

  イ 窃盗と1項強盗はともに奪取罪であり、かつ財物が保護法益であることから窃盗の範囲で重なり合う。

  ウ よって、窃盗罪の故意が認められる。

 ⑵ 2項強盗は1項強盗と法定刑が同一である。この場合も前述のとおり、構成要件の重なり合う範囲で故意責任を問うことができる。

  ア 両罪は行為態様が「暴行または脅迫」を加えるという点行為態様が共通しており、保護法益も財産権という点で共通する。よって、故意も認められる。かつ共同正犯も肯定すべきである。

  イ したがって、Yには住居侵入罪、窃盗罪、および2項強盗罪の共同正犯が成立する。

第3 罪数

 XとYには、①住居侵入罪の共同正犯(130条前段、60条)、②窃盗罪の共同正犯(235条、60条)、③強盗罪の共同正犯(236条2項、60条)が成立する。①、②及び③は①をかすがいとした1個の牽連犯(54条1項後段)となる。

以上

 

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