6/30/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
北海道大学法科大学院2024年 行政法
1. Xは行政事件訴訟法(以下略)3条2項に基づき、Yの本件決定の取消訴訟を提起することが考えられる。
⑴取消訴訟(3条2項)を提起するには、本件決定が「処分」に当たる必要がある。「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。これは公権力性及び法効果性から判断される。
ア 本件決定は、都市計画法(以下「法」とする)第8条1項に基づいて、公聴会を経ることなく行われ、Yが知事という優越的地位に基づき行ったものといえ、公権力性が認められる
イ 次に、法効果性について、たしかに同様の事例に関する判例(最判昭57.4.22)は、本件決定の効果はあたかも新たに同じような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数者に対する一般的抽象的な法効果しか有さず、建築確認等の建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分にの取消訴訟において地域指定が違法であることを主張すれば足りるから紛争の成熟性もないとして、処分性を否定した。
しかし、都市計画区域内において工業地域を指定する本件決定は、その地域内の建築物の種類、容積率、建ぺい率、建築物の面積等の制限を受け、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、その建築等をすることができないのだから、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課すものである。実際に、Xは、本件決定により、建築基準法別表第二(を)の建築物は建築確認を受けれなくなり(同法48条12号)、将来しようとしていた病院施設の拡張工事ができなくなっているのだから、その効果は一般的なものではない。また、建築確認を受けるためにはそのための準備に時間と費用がかかるのだから、本件決定の時点で決定の効力を争っておく必要があるといえ、紛争の成熟性もある。
ウ よって、本件決定は「処分」に当たる。
⑵他の訴訟要件につき、Xは本件処分の名宛人であるので、「法律上の利益を有する者」(9条1項)であるため、原告適格がある。また、訴えの利益(同項)、出訴期間(14条)も問題ない。
2. 以上より、Xは取消訴訟を提起すべきである。
以上