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2022年 民法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民法 日本大学法科大学院【ロー入試参考答案】

4/20/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

日本大学法科大学院2022年 民法

第1 設問1

1. Cは、本件土地上に建物1を建築して同土地を占有するBに対し、本件土地所有権(民法(以下、略)206条)に基づき、建物収去土地明渡請求をすることが考えられる。かかる請求は認められるか。

⑴ 上記請求が認められるためには、①Cが本件土地を所有していること、➁Bが本件土地上に本件建物1を所有し、本件土地を占有していること、が認められる必要がある。
 これをみるに、Cは本件土地の所有者であるAから本件土地を購入しており(①)、Bは本件土地上に本件建物1を所有し、本件土地を占有している(➁)。

⑵ もっとも、Bは、平成31年1月15日にAB間で締結した本件土地を目的物とする建物所有目的の賃貸借契約に基づく賃借権の存在を理由に、上記請求は認められない旨の反論をすることが考えられる。

ア Cは、上記賃貸借契約の当事者でないことから、上記反論が認められるためには、同賃借権が対抗力を有する必要があるところ、本件において賃借権に対する登記(605条)が備えられたとの事情はない。そこで、本件建物1に係るD名義の登記を以て、「土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するとき」(借地借家法10条1項)といえないか。

イ 同項の趣旨は、土地上に登記名義が備えられた建物が存する場合には、同登記名義人が当該土地上に建物を所有する権限を有することを推知し得る点にある。ところで、登記が対抗力を持つためには、その登記が少なくとも現在の実質上の権利状態と付合するものでなければならないことから、賃借権者との同一性を欠く他人名義の登記は無効であって、対抗力を有しない。加えて、同一性を欠く他人名義の登記は、更生登記(不動産登記法67条1項)による瑕疵の治癒も認められない。そのため、同一性を欠く他人名義の建物の登記によっては、自己の建物の所有権を第三者に対抗し得ず、当該登記を以て対抗力を認めることは、対抗力ある建物所有権の存在を前提に、これを土地賃借権に代えることとした同法の趣旨に反する。そこで、同一性を欠く他人名義の建物の登記を以て、「土地の上に借地権者が登記されている建物を所有する」とは認められないと解する。

ウ 本問で、本件建物1には、本件土地の賃借人たるB名義の登記は備えられておらず、その実子たるD名義の登記が備えられているにとどまる。そして、両者は人格的に独立した主体であることから、同一性を認めることはできない。

エ したがって、同項は適用されず、上記Bによる反論は認められない。

⑶ Bは、Cが背信的悪意者にあたり、「第三者」(177条)として保護されないことから、同項が適用されないとしても、上記賃借権を対抗することができる(1条2項)と反論することが考えられる。

ア Cは、令和3年2月8日に、借地権のない土地との説明を受けた上で、本件土地をAから購入している。そのため、Cは、借地権の存在につき悪意とはいえない。

イ したがって、上記反論は認められない。

⑷ Bは、上記賃借権を対抗することができないとしても、上記請求権を行使することは権利の濫用(1条3項)にあたり、許されないと反論することが考えられる。

ア 確かに、Cは、本件土地を購入する際に、現地検分を行なっていない。しかし、たとえ現地検分を行なっていたとしても、これにより直ちに借地権の存在を知り得たとは評価し得ない。加えて、本件においては、Cが予め借地権の存在を知っていた旨の事情、及びCが本件建物1の登記を妨害したとの事情はない。
 以上の事情に鑑みれば、Cが上記請求を行うことが権利濫用にあたるとは評価し得ない。

イ したがって、Bによる上記反論は認められない。

⑸ よって、Cによる上記請求は認められる。

第2 設問2

1. Cは、本件土地上に建物1を建築して同土地を占有するBに対して、本件土地所有権に基づき、本件土地の明渡請求をすることが考えられる。

⑴ これをみるに、上記同様にCは①、➁の要件を満たす。

⑵ もっとも、Bは、第一の通り、本件土地上に借地権を有しており、加えて、令和元年7月30日に本件建物1についてB名義で所有権保存登記を備えていることから、当該借地権をCに対抗することができる(借地借家法10条1項)と反論することが考えられる。

ア 本件建物1は、令和2年2月6日に、隣家からの類焼により全焼している。そして、その際、Bが、「建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに建造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示」(同条2項)したとの事情はない。そこで、本件建物1についてB名義で所有権保存登記を備えていることを理由に、上記借地権に対抗力を認めることはできない(同項、同条1項)。

イ したがって、Bによる上記反論は認められない。

⑶ 次に、Bは、令和3年2月20日に、本件建物2についてB名義の所有権保存登記を備えていることから、上記借地権をCに対抗することができる旨の反論をすることが考えられる。
 これに対して、Cは、Bの登記に先立って令和2年12月28日に、本件土地にAから本件土地を購入し、同日にその移転登記名義を備えていることから、上記反論は認められない旨の再反論をすることが考えられるところ、かかる再反論は認められる。

⑷ Bは、Cが背信的悪意者にあたり、「第三者」(177条)として保護されない(1条2項)旨の反論をすることが考えられる。

ア 確かに、Cは、本件土地上に建物2が建築途中であることを知っていたが、Cは、Aから、本件土地を借地権のない土地として購入していることから、借地権の存在を知った上で本件土地を購入したとはいえない。そこで、Cは借地権の存在につき善意であって、背信的悪意者にあたらない。

イ したがって、Bによる上記反論は認められない。

⑸ Bは、上記借地権に対抗力が認められないとしても、Cによる上記請求は権利濫用(1条3項)にあたり、許されない旨の反論をすることが考えられる。

ア Cは、本件土地上に店舗を建ててレストランの経営を行うことを目的に、本件土地を購入していることから、本件土地が更地であることを前提に売買契約(555条)を締結したといえる。そして、Cは、本件土地を購入する際に、本件建物2が建築途中であることを知っていた。それにも拘らず、Aに対して、本件建物2の所有権の帰属先及び借地権の有無を確認することなく本件土地を購入していることから、Cには、借地権の存在を知らないことにつき、落ち度が存する。他方で、半年後には本件建物2の建築に着手されていること、同建物が完成してから比較的短期間の間にこれにつき保存登記が備えられていること及び土地取引については現地検分を行うことが通例であることに鑑みれば、本件建物1が全焼した後に特段の措置を行わなかったことにつき、Bに落ち度があるとは評価できない。
 以上の事情に鑑みれば、Cが借地権を対抗できないことを理由に、本件建物2の収去及び本件土地の明渡しを請求することは、その権利を濫用するものと評価すべきである。

イ したがって、Bによる上記反論は認められる。

⑹ よって、Cによる上記請求は認められない。

以上

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