広告画像
2023年 憲法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2023年 憲法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

九州大学法科大学院2023年 行政法

1. かかる判決は、裁判官が判決主文に論理的に関係の無い憲法判断を敢えて傍論で展開することは「ねじれ判決」と呼ばれるものである。頻繁に違憲性が問題となる靖国神社参拝についての判断を回避すれば、今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いというべきであり、裁判所は本件参拝の違憲性について先例拘束力がない、傍論であっても、裁判所としての態度を示すことにより、違憲と評価されうる行為の実施を牽制する意図が存する。

2. 憲法81条で定める違憲審査権は、通説上は下級裁判所にも認められると解するのが一般的であり、さらに 76条3項では,裁判官に対して 良心に従って職権を行うことも保障されているため,裁判官には違憲の確信を得た場合,何らかの形で違憲問題の指摘をすることが認められている。
 他方で最高裁を頂点する現行の違憲審査制を考慮すると、下級裁判所での違憲審査には一定の制約も求められることになる。
 すなわち、主文の内容が傍論での憲法判断と直接関係しない判決たる「ねじれ判決」を安易に許容することになれば、勝訴した側が傍論の憲法判断の内容について不服であっても、訴訟法上は勝訴した側は上訴ができないという「控訴封じ」、「上告封じ」 といった現象がみられることがある。
 これにより、事実上憲法判断に不服があるものが上訴することで最高裁判所による憲法判断を受けることが不可能となり、最高裁を終審裁判所とする日本国の違憲審査制の根幹を揺るがすものであるとの批判がありうる。
 この問題の解決策として、そもそも裁判所自身の見解として公式参拝が違憲でありそれに付随する支出も違法であると判断したのであれば、原告の請求を容認する論理を展開することがありうる。それにより判決主文にて違憲性を表明し、先例拘束力を生み出す裁判例を示すことが可能となる。
 また、日本の裁判制度として、上訴には形式的不服が必要とする上訴システムを変更し、実質的に自己の不利益となる判決が出た場合には、それが勝訴判決か敗訴判決かに関わらず上訴が可能であるとの制度構築を行うことが考えられる。
 かかる制度は前述のねじれ判決の問題点を処理できる一方で、判決理由に不服がある勝訴した当事者が不要な上訴を行い、多忙な裁判所に更なる審理を要求し裁判制度全体の遅延を招く恐れがあり、ねじれ判決問題解消の利益を上回る不利益発生の可能性があるこの制度を常に是認することはできない。

 

以上

おすすめ記事

ページタイトル
ロースクール

【最新版】ロースクール入試ハンドブック公開!全34校の説明会/出願/試験日程・入試科目・過去問リンクが一冊に!【2026年度入学者向け】

#ロースクール
ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】