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2022年 刑事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/22/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2022年 刑事訴訟法

(1)について

1. 本件で、Xは「現行犯人」(刑事訴訟法(以下略)213条)、すなわち、「現に罪を行い終った」(212条1項)といえるか。その意義が条文上明らかでなく問題となる。

(1) 現行犯逮捕が令状主義(憲法33条、199条1項)の例外として許された趣旨は、本来「理由」(199条1項本文、憲法33条)の審査として特定の犯罪の存在と当該犯罪を被疑者が犯した嫌疑があることを審査すべきところ、その現行犯性によりこれが明白で誤認逮捕の恐れがないからである。
 よって、「現行犯人」といえるには①犯罪及び犯人の明白性、②犯罪と逮捕との間の時間的・場所的接着性を要する。なお、犯罪と犯人の明白性については、上記 212条1項の趣旨からすると、逮捕者が直接覚知した客観的状況から合理的に判断して、犯行終了時の状況が存続しているといえるか否かによって判断すべきである。また、被害者の供述や犯人の自白などの事情については、客観的状況を補充する限りで認定資料として用いることができると考える。

⑵ PがXを逮捕したのは11 時 25 分頃であり、犯罪からわずか25分程度しか立っていない。また、逮捕現場は犯行現場から 30 メートルほどしか離れていない場所である。よって、時間的場所的な接着性が認められる。また、Xは近くの店で人を殴り倒したと述べているため、本件の犯人であることが強く窺われる。さらに、Xは高身長であり、振り向きざま足がもつれて倒れるなど酩酊していることが疑われるところ、これは犯人が高身長でひどく酩酊していたという被害者の供述と一致する。PはVの被害状況も現認しているため、犯人と犯罪の明白性が認められる。

⑶ 逮捕の必要性も認められるため、①の現行犯逮捕は適法である。

(2)について

1. 下線部2の被害届、下線部3の捜査報告書につき、裁判所が証拠能力を認めるためには、各証拠が供述証拠であることに鑑み、伝聞証拠排除の規定(320条1項)上の要件を満たす必要がある。

2. 320条1項の趣旨は供述証拠が知覚・記憶・表現・叙述の各過程に誤りが介在するおそれが高いことから、宣誓(154,規則116~120),反対尋問(憲法 37条2項前段),裁判所による供述態度等の観察によって供述内容の真実性を吟味する必要があるのにも関わらず、公判廷外の供述についてはこれをなし得ないため、このような証拠の証拠能力を否定し,誤判防止を図った点にある。
 そのため、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠で、要証事実との関係において供述内容の真実性を立証するためのものをさす。

3. 被害届及び捜査報告書はいずれも公判廷外の供述を内容とするものである。
 そして、下線部2の被害届の立証趣旨は男に殴られたこと、また下線部3の捜査報告書の立証趣旨は、被害及び犯行現場の状況である。以上の要証事実との関係では、各書面はその内容が真実であることを前提としなければ意味を持たないことから、本件の2つの書面はいずれも公判廷外の供述を内容とする証拠で、要証事実との関係において供述内容の真実性を立証するためのものとしての伝聞証拠にあたる。
 そこで、以下は各書面が伝聞例外としてどのような要件のもと証拠能力が認められるかにつき検討する。

4. 被害届について

 被害届は被害者という被告人以外の者の供述書であるため、321条1項3号書面に該当する。そこで、「供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき」すなわち供述不能要件及び供述の不可欠性に加えて、「その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る」すなわち絶対的特信状況を満たした場合に限り証拠として採用することができる。

5. 捜査報告書について

⑴ 下線部3は警察官作成の実況見分調書である。そこで、実況見分調書にいかなる伝聞例外規定が適用されるか問題となる。

⑵ 321条3項が簡易な要件で伝間例外を認めている趣旨は、検察官等の地位に基づく業務であることと事物の状態を客観的に認識する作業であることから、類型的な正確性が期待できること、及び書面による報告の方が口頭による報告より正確性が高いことから、緩やかな要件で書面自体の証拠能力を認めた点にある。
 そして、実況見分調書は検証調書と比べて任意処分か強制処分かという違いがあるにすぎず、検証調書と同様に捜査機関が主体として行われていることため類型的な正確性が確保できているといえる。そこで、実況見分調書も「書面」にあたり、321条3項が適用されるものと考える。

(3) 321条3項の「真正」とは作成名義と作成内容の真正をいい、「証人として尋問を受け・・・供述したとき」とは反対尋問を受けても崩れなかったことをいう。本件でもこれを満たした時には、原則として証拠採用することができる。

以上


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