6/27/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
岡山大学法科大学院2024年 公法系
1. 本件各規定は要指導医薬品として指定された医薬品について、店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法によって販売をする自由(以下、「本件自由」)を侵害し違憲ではないか。
⑴憲法22条1項は職業選択の自由を保障しているが、自己の選択した職業を遂行する自由まで含まれないと無意味であるから、職業活動の自由も同項により保障される。
よって、本件自由も職業活動の自由であるが、同項により保障される。
⑵法36条の6第3項により、対面による情報提供や指導がない場合、つまり店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法によっては要指導医薬品の販売が禁止されているから、本件自由は制約されている。
⑶では、かかる制約は公共の福祉(22条1項)による制約として正当化されるか。
まず、本件自由は、医薬品を対面のみならず郵便によっても販売することにより様々な人に要指導医薬品を販売することができ、医薬品の販売によって自己のスキルを活かし人を助けたいという感情を実現することにつながるのであるから自己実現の価値を有するといえ、自己の人格形成とも密接に関わる重要なものである。
しかし、本件自由はその性質上社会的相互関連性が大きいものであるから、公権力による規制の要請が強く、制約の必要性が内在する権利である。
次に、規制態様について、本件の制約は狭義の職業選択の自由それ自体に対する制約として規制態様が強いと解される許可制ではなく(薬事法判例参照)、販売を禁止するにとどまるものである。もっとも、郵便による販売は営業活動上、極めて重要な販売方法であり、それを全面的に禁止することは職業活動の自由に対する重大な制約にあたると考える。
一方で、本件制約は医薬品による人体への健康被害を防止するという消極目的規制であり、政策判断の余地が少ないため裁判所の判断に馴染む。
よって、中間の審査基準によるべきであり、目的が重要で、手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合には本件制約は正当化されると考える。
⑷本件各規定の目的は上述の通り医薬品による人体への健康被害を防止することであり、重要である。
次に本件各規定の目的への適合性について、たしかに要指導医薬品の服用による健康上のリスクと対面販売の義務付けとの関係が明確でないと指摘する意見はあるが、医薬品の服用上の注意事項は対面で直接伝えられることにより服用者の記憶に残り、適切に実践される可能性や禁忌行為を避けることのできる可能性が上がるのであるから、本件各規定は目的に適合している。
また、本件各規定の目的に対しての必要性につき、対面販売の義務付けではなく、郵送販売も認めた上でオンライン指導の義務付けで足りるとする意見もあるが、オンラインよりも薬局の薬剤師と対面して注意事項を聞いた方が効果的であり、オーバードーズなどが社会問題となっており、また、医薬品がその用法を間違えると死に至るような性質のものであることに照らすと、オンライン指導の義務付けでは上記目的を達し得ない。また、要指導医薬品の市場規模は2014年において約51億円、2015年においては約26億円と、2014年度において約 8944 億円、2015 年度においては約9385億円である一般医薬品等全体の市場規模に比べると1%にも満たないほど小さいものであることを考えると、本件各規定の医薬品販売業者に与える不利益は小さい。よって、本件各規定はその目的に対して相当性が認められる。
よって、本件各規定は目的が重要で、手段が目的との関係で実質的関連性を有すると言える。
2. 以上より、本件各規定は本件自由を侵害せず合憲である。
以上