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2023年 行政法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 行政法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

九州大学法科大学院2023年 行政法

1. (1)給付行政の具体例
 給付行政とは私人に便益を与えて公益の実現を図る行政のことをいい、具体例としては補助金の交付、老人福祉施設の設置や子育て支援事業、学校の設置、道路公園橋の設置管理などがある。

(2)法律の根拠の要否
 次に給付行政を行うのに法律の根拠の要否について述べる。そもそも行政には、憲法41条の趣旨を具現化した法律留保の原則が適用されるため、給付行政にも法律の根拠が必要と思える。もっとも、行政作用は行政府が国家ないし公益のために行うためその判断が尊重されるべきものであり、国民の憲法上人権を侵害するようなものについてのみ法律の根拠を要するとすれば国民の人権が不必要に侵害されることはなくなる。そのため、国民に便益を与える給付行政は法律留保の原則の適用外であり、法律の根拠は不要である。

2. 比例原則とは、行政目的を達成するために必要な範囲内でのみ行政機関は行政権限を用いることが許される原則をいう。そして、目的達成に比例する措置が何かということは一義的に明確ということはできないため、行政機関の裁量権行使が社会通念上著しく妥当性を欠き逸脱濫用として違法となるかを判断する基準としての意義を有する。かかる原則を用いた代表的な判例は神戸税関事件判決がある。かかる判決は、国家公務員法には懲戒事由がある場合に懲戒性分をすべきか否か、いかなる懲戒処分かをすべきかについて具体的な基準を設けていないため、諸般の事情を考慮し坂井通念上著しく妥当を書き、裁量権を乱用したと認められる場合には違法とする旨を述べた。

3. 聴聞手続は行政手続法13条1項1号に規定される手続であり、特に不利益が大きい処分に対して認められており、当事者以外にも処分と利害関係を有する者(同法17条1項)の参加が認められている。また、当事者及び参加人については文書の閲覧請求(同法18条)が認められており、20条以下に厳格な審理方式が定められている。さらに、27条により聴聞手続の内容な十分な参酌が行政庁に義務付けられている。
 他方、弁明手続は13条1項2号に規定される手続きであり、聴聞手続と比して不利益度が小さい処分に対して認められるものである。また、弁明を記載した書面を提出して行うことが原則(29条1項)であり、参酌を義務付ける条文等はない。
 以上を踏まえると聴聞手続と弁明手続の違いは対象となる不利益処分の不利益度、参加人の認否、手続の厳格性、閲覧請求権の認否、参酌の義務付けの存否などにある。

4. 執行罰とは不作為義務又は非代替作為義務がなされない場合に、行政庁が一定額の過料を科すことを予告して間接的に義務の履行を促し、なお義務を履行しないときはこれを強制的に徴収することで義務の履行を確保する行政上の強制執行をいい、砂防法に規定されている。
 他方、秩序罰は、行政上の秩序維持のために違反者に制裁として過料を科すものをいい、具体的に届出義務違反などがある。
 以上を踏まえると執行罰と秩序罰の違いは、執行罰は未来の義務履行確保を促すものに対し、秩序罰は過去の義務違反に対する制裁を科すものといった違いがある。

5. そもそも、行政事件訴訟は、裁判の基礎となる訴訟資料の収集提出を当事者の権能かつ責任とする弁論主義を基本的には採用している(行政事件訴訟法7条)。もっとも、行政事件訴訟は、行政上の法律関係を対象としており、私的法律関係を対象とする民事訴訟と異なり直接公共の利益と関係するため、客観的に適法でありかつ公正になるような結果が求められている。それにもかかわらず全体的に弁論主義を採用すると、訴訟資料の提出が不十分なことを原因に公正な結果が得られないおそれがある。そのため裁判所が必要と認めた場合には職権証拠調が採用される(同法24条)。したがって、行政事件訴訟における職権証拠調べは、公共の利益のために弁論主義を補充する意義を有するものといえる。

6.(1)補充性要件の意義 
 無効確認訴訟における補充性要件とは行政事件訴訟法の「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」という部分の要件を指す。無効確認訴訟は出訴期間の制約のない取消訴訟としての実質を有するものであり限定しなければ紛争の早期解決が図れないこと、また処分に重大明白な瑕疵があって無効の場合には取消訴訟の排他的管轄が及ばないため民事訴訟の原則に戻るべきであることという理由から、過去の行為の無効確認を求めることができるのはあくまで例外的な場面であるということを示す意義を補充性要件は有している。

(2)補充性の判断方法 
 次に補充性の判断方法について述べる。原子炉設置許可処分に関する判例において、補充性要件には無効の確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも含むとする旨を判示しており、当事者訴訟民事訴訟と無効確認訴訟を比較してより直截的で適切かどうかを見極めた上で補充性要件を満たして行くか判断していく。 

                                      以上

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