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2021年 民法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 民法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/22/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東北大学法科大学院2021年 民法

 

問1

1. BはCに対し、所有権に基づく返還請求権としての甲機械の引渡し請求を行うことが考えられるが、かかる請求は認められるか。
 上記請求の要件はBの動産所有及びCによる現在の動産占有である。
 本件では、CがAから甲を受け取りこれを占有している。また、確かにAがCに対し甲を売買(民法(以下略)555条)しているものの、Bの所有物である甲の処分権を持たないAの売買は他人物売買であり、AC売買自体はBに影響を及ぼさず、Bの甲所有はなお認められる。

2. もっとも、Cは即時取得(192条)を理由に、Bは甲の所有権を喪失しているとの抗弁を主張をすると考えられる。
 192条が「占有を始めた」ことを要求した趣旨は、即時取得が真の権利者の犠牲の下に動産譲受人を保護するものである。そのため、「占有を始めた」とは一般外観上従来の占有状態に変更を生じるほどの占有態様の変化を要する。
 即時取得が権利者らしい外観への信頼を保護する規定である以上、192条の「善意」は半信半疑では満たさず、また善意は占有取得時に要する。
 本件では、動産たる機械甲を売買という取引行為により入手している。また、当初は占有改定による引渡しに留め、現にAが所持し続ける観念的な引渡しであった以上、占有態様に変化はなかった。もっともその後、最終的に現実の引渡しを受けており、占有者がCに変化することで本質的に占有態様の変更を生じさせている。よって、Cが甲の現実の引渡しを受けたときに、「占有を始めた」といえる。
 Cは甲の現実の引渡しを受けた時点では、甲がBのものである点につき悪意である。よって、善意の要件を満たさない。

3. よって、即時取得による所有権喪失の抗弁は失当であり、Bの請求は認められる。

問2

1. ①②の当否を論じる前提として、確定日付のある通知が同時に両者へ到達した場合の処理につき論ずる。

2.

 ⑴ 467条1項で通知が第三者対抗要件とされているのは、債務者の認識を通じて第三者への公示を備えると考えられたからである。そうだとすれば、第三者対抗要件を備えたというには、債務者が債権譲渡の存在を知り得る状態、すなわち通知の到達を要する。
   そして、同条2項が確定日付のある証書の要求をしているのは、譲渡の通知承諾の日時を遡らせる不正を可及的に防止する趣旨であり、それ自体の公示機能を期待するものではない。
   したがって、確定日付ある通知・承諾が2つ以上ある時は、通知が到達した日時又は承諾の日時の前後によって優劣を決する、

 ⑵ 本件では、CD同時の到達であり、その優劣を決することができない状態にある。

3.

 ⑴ そのような場合に、通知の同時到達時に一方債権者が全額の債権を有するのか、それとも分割された債権を有するのかという問題がある(①について)。

 ⑵ この点、分割請求権に留まると解せば、債権譲渡につき関与しえず非の無い債権者に分割弁済を課すことになり、全額弁済の場合より時間や費用の負担を負わせることになる。また、債権者らは優劣が決められないのみで、債権を共有しているのではない。そのため、一方債権者が全額請求することは可能である。

 ⑶ 以上より、一方債権者たるCが全額請求可能とする①は妥当であると考える。

4.

 ⑴ その場合、履行を受けられなかった債権者は、譲受人に対し分配請求権を有するのかという問題がある。(②について)

 ⑵ この点、譲受人相互に優劣が生じていないにも関わらず、遅れた債権者が一切の債権回収が不能であるとするのは公平性を欠く。そこで、公平の原則から、各譲受人は内部的に各自の譲受人債権額に応じて譲渡債権の額を按分され、当順位譲受人に対し分配請求権を取得すると考えるべきである。

 ⑶ 以上より、同順位譲受人たるDに受領金銭の一部を支払うよう求める権利がないとする②は不当である。

問3

1. Bは平均よりも首が長い点を捉え、過失相殺(722条2項)の適用を主張できないか。
 確かに、持病などの身体的素因を有することは「過失」とは言えず、過失相殺の規定を直接適用はできない。

2. しかし、被害者の身体的素因という被害者側の事情によって損害が拡大している以上、損害賠償額の決定においてこれを考慮することが損害の公平な分担という過失相殺の趣旨に合致する。よって、被害者の身体的素因は減責事由とすべきである。もっとも、被害者の特異的な体質が疾患に当たらない程度の特徴である場合、特段の事情なき限り、個々人の個体差として許容されるべきものであるから、考慮すべきでない。
 症状が重くなった原因は首が長いことによる頸椎不安定症である。首の長さは身体的特徴に留まり、疾患にまで至るものではない。

3. よって、過失相殺の適用はなく、Aは全額の責任を負う。

問4

1. 相続放棄は「自己のために相続が発生したことを知ったとき」から3ヶ月以内にしたければならない(915条1項)。AはBの死亡を知ってから4ヶ月程度経っており、放棄できないとも思える。

2. しかし、915条1項が3か月の熟慮期間を設けている趣旨は、被相続人の財産状況を把握し相続するか否かを決めさせる点にある。そのため、被相続人に相続財産が全くないと信じたために3か月以内に相続放棄をしなかった場合、そのように信じたことについて正当な理由があるときには、3か月の期限は、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時から進行すると解するべきである。

3. 本件では、AとBは別居し連絡がなく、Aが相続財産の存在等について認識しえなかった。よって、多額の債務の存在を知った上記認識の時点たる令和2年7月10日を起算点とし3ヶ月は相続放棄できる。

以上

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