5/12/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
九州大学法科大学院2025年 民法
設問1
法定地上権(388条前段)の成立要件は、①土地及び建物の存在、②同一人所有、③「その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った」ことである。
設問2
①は前提として必要となる要件である。
②の要件は、建物に抵当権を設定した場合には、抵当権設定当時に土地建物が別人所有の場合には、土地利用権があるはずであって、土地利用権にも抵当権の効力が及ぶため(370条類推適用、87条2項類推適用)、競落人もこの土地利用権を承継することができること、土地に抵当権を設定した場合には土地利用権が抵当権に優先するため、法定地上権を成立させる必要がないことから、いずれの場合にも法定地上権の成立を認める必要はない。そのため、②の要件が必要となる。
③の要件は、抵当権者が把握しようとした担保価値を害されているという法定地上権を成立させる趣旨が妥当する場面を規定する観点から、要求される。
設問3
1. 丙建物のための法定地上権が成立するか。
2. 甲土地と乙建物が存在しており、どちらもB所有であった。その後、2021年春頃に、甲土地及び乙建物に共同抵当を設定し、Aが甲土地の抵当権を実行したことにより、甲土地の所有者がCになったので、「その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った」といえ、法定地上権の要件を満たす。
3. もっとも、抵当権者の合理的意思としては、土地の更地としての価値を把握しているから、丙建物のための法定地上権を成立させることは、抵当権者の意思を不当に害するし、執行妨害を容易に許すこととなりかねないので、原則として法定地上権は成立しない。
ただし、新建物にも同順位の抵当権の設定を受けた等特段の事情がある場合には、抵当権者を害することにはならないから、法定地上権が成立する。
本問において、Aは丙建物の完成直後からBに対して、丙建物に抵当権を設定することを強く求めていたが、結局、甲土地の抵当権の実行以前に丙建物に抵当権は設定されていない。よって、特段の事情は認められないから、、丙建物のための法定地上権は成立しない。
以上