2/29/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
九州大学法科大学院2023年 民事訴訟法
第1 問1(1)
1. Xの訴えは事実審の口頭弁論終結時においてなお期限未到来となる貸金返還債権を訴訟物とするものであり、将来給付の訴えにあたる。将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる(民事訴訟法135条、以下法名略)。将来給付の訴えは、現在給付の訴え異なり、現に履行すべき状態になく、現段階における給付義務の未履行そのものは当然の状態といえるから、将来給付判決をする必要性が特に高い場合に認められるものである。そこで、「あらかじめその請求をする必要がある場合」の判断は、給付義務の性質や義務者の態度を考慮要素として判断する。
2. 貸金返還債務は一般に履行期が到来した直ちにこれが履行される必要性の高い給付義務とは解されないから、本件でXの訴えが許されるには、Yが特段その存在を争っている状況などが必要となる。
第2 問1(2)
1. 上記の要件が満たされない場合、Xの訴えは訴訟要件が欠けるものであるから、裁判所は却下判決をすることになる。
2. また、却下判決がなされた場合、訴訟要件の存否の争いの蒸し返しを防ぐため、個々の訴訟要件の不存在について既判力が生じる。したがって、本件で上記判決が確定した場合、Xが本件貸金債権にかかる将来給付の訴えの利益を有しないことについて既判力が生じる。
第3 問2(1)
1. 貸金返還請求権について期限が未到来であるとの判断がされた場合、XのYに対する貸金返還債権は未だ履行すべき状態に至ってないのであるからXの請求の要件が満たされていないことになる。そこで、裁判所は、Xの請求を棄却する判決をするべきである。
2. そして、上記のような判決がされた場合、既判力は、口頭弁論終結時時点でのXのYに対する金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権の不存在について生じる。
第3 問2(2)
1. 裁判所はXの請求を認容する判決をするべきである。
2. 第3.1で述べた判決は、前訴口頭弁論終結時点でのXのYに対する貸金債権の不存在を確定するものに過ぎない。したがって、口頭弁論終結後に期限の到来し再度その給付を求める主張は前訴既判力によって遮断されるものではなく、裁判所は請求認容判決をすることができる。
以上