6/2/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2024年 民事訴訟法
問1
下線部①の主張は、YがXから甲を買い受けたことで、Xは甲の所有権を喪失した、という旨の反論である。
かかる主張は、Xが甲の所有権を有しているというXの主張と両立し、かつ、請求原因による法的効果を障害するものであるから、抗弁にあたる。
問2 問題⑴
1. 応答の仕方としては、自白、否認、不知及び沈黙の4つが挙げられる。
2. 自白(民事訴訟法(以下法名省略)179条)
訴訟法上の効果として、不要証効(179条)及び裁判所拘束効(弁論主義第2テーゼ)が生じる。
3. 否認
否認された事実については、相手方が立証責任を負う。
4. 不知
不知については、争ったものと推定されることとなる(159条2項)。
5. 沈黙
沈黙については、自白したものとみなされる(159条1項本文)。その結果、自白と同様の訴訟法上の効果が生じることとなる。
問題⑵
下線部②の主張は、Yによる所有権喪失の抗弁に対する否認にあたる。なお、当該抗弁についての立証責任はYが負うものである。
問3
1. 本件において、下線部③の事実が当事者のいずれによっても主張されていないにもかかわらず、裁判所においてかかる認定をすることは、弁論主義第1テーゼに反し、違法とならないか。
⑴そもそも、当事者意思の尊重と不意打ち防止という弁論主義の根拠、機能からすれば、訴訟の勝敗に直結する主要事実に弁論主義を及ぼせば十分である。また、証拠と共通の働きをする間接事実や補助事実に弁論主義を及ぼすと、自由心証主義(247条)を制約することになる。
そこで、弁論主義が適用される事実は主要事実に限られると解する。
⑵これを本件についてみると、下線部③の事実は、所有権喪失の抗弁と両立し、抗弁による法的効果を障害するものであるため、再抗弁に該当する。そうすると、かかる事実は権利の発生、変更、消滅等の規範の要件に該当する具体的事実にあたり、主要事実にあたると考えられる。そうすると、当事者のいずれも主張していない下線部③の事実を裁判所が認定することは、弁論主義第1テーゼに反することとなる。
2. したがって、かかる判決は弁論主義の第1テーゼに反し、違法である。
以上