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2023年 民事系/民事訴訟法 一橋大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 民事系/民事訴訟法 一橋大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

一橋大学法科大学院2023年 民事系/民事訴訟法

第1(設問)

1. 裁判所は、本訴を棄却し、反訴について100万円の範囲で請求を認容すべきである。以下、理由を述べる。

⑴ まず、Bによる相殺の抗弁が民事訴訟法(以下、略)142条に反し許されないのではないか。相殺の抗弁が142条に反する場合には、裁判所は、本訴及び反訴をどちらも認容すべきとなるため問題となる。

ア この点、相殺の抗弁は、攻撃防御方法にすぎず、「訴え」に当たらないから142条に直接抵触することはない。しかし、同条の趣旨は、判決の矛盾抵触、応訴を強制される被告の煩、審理重複による訴訟不経済を回避する点にある。そこで、かかる趣旨が妥当する場合には、142条を類推適用すべきである。
 そして、別訴で請求されている債権と同一の債権を相殺の抗弁に提出する以上、審理が重複するし、相殺の抗弁には、既判力(114条2項)が生じるから、判決の矛盾の可能性もある。したがって、相殺の抗弁についても142条が類推適用される。

イ もっとも、相殺の簡易決済機能及び担保的機能をできる限り保障する必要がある。この点、本件の本訴は、請負契約に基づく代金支払請求であるところ、反訴は同一の請負契約を原因とする修補に代わる損害賠償請求であり、両債権は同一の契約に基づく密接な関係にある債権であり、相殺による清算的調整を図るべき要請が強いものといえる。それにもかかわらず、これらの本訴と反訴の弁論を分離すると、上記本訴請求債権の存否等に係る判断に矛盾抵触が生ずるおそれがあり、また、審理の重複によって訴訟上の不経済が生ずるため、このようなときには、両者の弁論を分離することは許されないというべきである。したがって、本件において、本訴と反訴の弁論を分離することは許されない。

ウ そして、このように考えると、本件の別訴と相殺の抗弁は、同一の訴訟手続内での審理が強制されることになる。そのため、判決の矛盾が生じるおそれは少ないし、審理の重複、被告の応訴の負担が生じるおそれもない。したがって、本件における相殺の抗弁は142条の趣旨に抵触しない。

エ 以上より、Bによる相殺の抗弁は142条に反せず適法である。

⑴ では、裁判所はいかなる判決をすべきか。

ア 本件では、裁判所は、請負代金及び損害賠償請求権のいずれも存在するとの心証を得ている。そのため、まず、本訴については、200万円の請負代金と損害賠償請求の相殺を認めAの請求を棄却すべきである。

イ そして、Bの申し立ての趣旨を合理的に解釈し、本件における反訴請求は、本訴において相殺の抗弁について既判力ある判断がされた場合には反訴請求しない趣旨の予備的反訴に変更されたものと考える。
 もっとも、本件では、相殺の抗弁に提出された損害賠償請求権は、300万円のうち200万円の部分である。したがって、Bの合理的意思としては、200万円の部分については、反訴請求を予備的反訴に変更し、残りの100万円については、反訴においてその支払いを求めるのがその意思だと考えられる。
 したがって、反訴のうち200万円の部分については、本訴で相殺の抗弁が認められたことによって、反訴が取り下げられたことになり、残りの100万円については、裁判所が、損害賠償請求が存在すると心証を得ているから、請求を認容する判決をすべきである。

ウ 以上より、裁判所は、本訴を棄却し、本訴については、100万円の範囲で請求を認容する判決をすべきである。

以上

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