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2023年 刑法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 刑法 九州大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

九州大学法科大学院2023年 刑法

設問一

1. 自由刑純化論
 自由刑純化論は、刑法の謙抑性より刑罰は必要最小限であるべきであり、自由刑は移動の自由を制約する刑罰としての必要最小限の自由制約に純化すべきであるという考え方であり。これは、懲役を廃止し強制作業を伴わない自由刑の一本化をするために、各種指導を受ける義務という新たな自由制約を加える自由刑単一化論とは相反するものである。

2. 本権説
 本権説とは、民法上保護される権利だけを刑法は保護すれば足りるとする見解を前提に、占有移転罪の保護法益を「所有権その他本権」と解する見解である。そして、本権説によれば、占有移転罪は本来「所有権」を保護するものであるが、242条によって保護法益は「本権」にまで拡大されたと理解するため、同条の「占有」とは「本権に基づく占有」「権原に基づく適法な占有」だけを意味することになる。

設問二

第1 小問(1)

1. Xは野犬を撲殺しているため、器物損壊罪(刑法(以下略)261条)が成立しないか。

2. 同罪の構成要件は①他人の物を②損壊または傷害することである。傷害とは、動物を殺傷したり逃したりすることをいう。

3. Xは野犬を撲殺しているので、②傷害したといえる。しかし、野犬は「他人の物」には当たらないため、同罪の客体には含まれない。

4. したがって、Xの行為は構成要件該当性がなく、Xは無罪である。

第2 小問(2)

1. YはAの飼っていた土佐犬Hをゴルフクラブで殴り殺しているため、器物損壊罪が成立しないか。

2. 構成要件該当性

⑴ 同罪の構成要件は小問(1)で述べた通り、①他人の物を②損壊・傷害することである。

⑵ Hは他人Aが飼っている土佐犬であるため、「他人の物」である(①)。そして、殴り殺しているため、傷害している(②)。

⑶ よって、同罪の構成要件該当性が認められる。

3. 違法性

⑴ もっとも、Yはどう猛なHがYの飼っていたハムスターを噛み殺そうとしたことを防ぐためにHを殴り殺しているため、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されないか。

⑵ 正当防衛が認められる要件は①急迫不正の侵害があること、②防衛の意思、③「やむを得ずにした行為」であることである。

ア 「急迫」とは法益侵害が現に存在しているか、又は間近に押し迫っていることをいうが、本件のように、飼い主の故意・過失が不存在の場合においての動物による侵害も不正の侵害といえるか。

(ア)いわゆる対物防衛の問題であるが、動物による侵害も被侵害者の正当な法益を侵害していることには変わりないので「不正の侵害」にあたる。

(イ)よって、本件ではHが現にYの所有物であるハムスターを噛み殺そうとしているため、Yの自己の権利の不正の侵害が現に存在しているといえる。そのため、急迫不正の侵害があるといえる(①)。

イ 防衛の意思があるといえるには、侵害の認識と侵害に対応する意思があれば足り、防衛の意思と攻撃の意思とが併存していてもそれだけで防衛の意思を欠くとはいえない。「やむを得ずにした行為」であることとは防衛行為の相当性のことを指し、武器対等の原則を念頭に置きつつ、性別、体格差、年齢等を考慮して社会的に許容される行為であれば相当性を満たすといえる。

ウ 本件において、Yは自分が飼っているハムスターを守るため。すなわち自己の所有権を防衛するためにHを攻撃している。そのため、「防衛の意思」があったといえる(②)。また、Yはゴルフクラブを用いているが、どう猛な土佐犬に対して素手で対抗することは難しく、ゴルフクラブで殴る行為は相当性を欠いていたとはいえない(③)。

⑶ よって、Yには正当防衛が成立する。

4. 以上より、Yの行為は違法性が阻却されるため、Yは無罪である。

以上

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