7/22/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2021年 行政法
第1 問1
1. ①の行為は、「処分」(行訴法(以下略)3条2項)に当たるか。
⑴ 処分とは、公権力の主体たる地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
⑵ ①の届出は、一民間企業である株式会社Aによってなされる行為であり、公権力が主体となっている行為ではない。
⑶ したがって、①は処分に該当しない。
2. ②の行為は、処分に当たるか。
⑴ ②のB県知事がAの届出を不受理とする行為は、B県知事という公権力が主体となっている。
⑵ ここで、行手法上の「申請」(行手法2条3号)と「届出」(同条7号)は、法令上、行政庁が許否の応答をすべきかこととされているか否かを異にする。そして、「申請」に当たる場合、許諾の応答は許認可等を求める行為に対する「処分」に当たるため、B県知事の行為は処分に当たる。そのため、老人福祉法(以下、「法」。)29条1項の定める「届出」が行手法上の「申請」、「届出」のいずれにあたるかが問題となる。
法29条1項の届出について、行政庁がこれの許諾の応答をすべきことを定める条文はない。また、参考資料によれば、「有料老人ホーム」は地方公共団体への入居申請などは必要なく、直接当該ホームの運営者と入居者が入居契約を締結する。
以上の事実に着目すれば、法29条1項の届出は行手法上の「届出」に位置付けられることになる。したがって、かかる届出に対する許諾の応答は法律に定められていないことから、直接・具体的法効果性が認められない。
⑶ よって、②は処分に該当しない。
第2 問2
1. (1)の時点
届出(法29条1項)が講学上の「届出」に該当する以上、B県は計画の届出書の内容の変更を命じる「処分」をすることはできない。したがって、「行政指導」(行手法2条6号)の範囲で計画の修正を促すことができるに過ぎない。
2. (2)の時点
「権利金その他の金品を受領してはならない」という法29条6項の規定に違反するため、B県知事は同項違反を理由とした改善措置命令(同条13項)をすることができる。
第3 問3
帳簿作成義務(法29条4項)・情報開示義務(同条5項)違反は、同条13項の改善措置命令の対象となるから、B県はAに対して同項に基づき改善措置命令をすることができる。
そして、改善措置命令は「行政庁」たる県知事が「法令」たる老人福祉法29条13項に基づき、「特定の者」を名宛人として改善に必要な措置をとる「義務」を直接課す「処分」にあたることから、不利益処分にあたる(行手法2条4号)。
改善措置命令は、行手法13条1項1号イからハの処分のいずれにも該当しないことから、B県知事はAに対して弁明の機会を与え(同条1項2号)、不利益処分の理由を提示する(同法14条1項)。弁明は原則として書面で行うため(同法29条1項)、B県知事は弁明の機会までに相当な期間をおいて、Aに対し行手法30条各号の事項について書面で通知しなければならない(同法30条柱書)。
以上